拾得物は…



「1000ガルド、拾ったー!」
ある日、町に消耗品の補充に立ち寄ったところ、赤毛の少年が嬉々として声を上げた。

周囲の雑踏は騒がしく、その声が聞き取れたのは、彼の隣にいた赤い目の軍人と、少年専属の使用人、ツインテールの少女と、彼女に守られている緑の髪の導師だけだった。

「1000ガルドも落とすなんて、落とした奴もバカだよなー。
こんなにデケーのに」

けらけらと楽しそうに笑う少年に、親馬鹿使用人は苦笑する。

「お前だって、気付かないで、結構色んなもん落としてたぜ」
「最大の落とし物は、落ち着きですかね」

軍人がそう茶化すと、少年はうるせーよ!と噛み付く。

「1000ガルド……ラッキー!」
「アニス……」

ウキウキと少女がお金を財布に入れ、導師が困ったように笑う。

「あっ、アニス!!オレが拾ったんだぞ!」
「いーじゃん、ケチケチしなくてもぉ」

少年がそれに気付き、怒り出すが、少女は公爵家のお坊っちゃんでしょ?と悪びれない。

「二人とも〜、拾得物は軍に届けないといけないんですよぅ?」

軍人が軽い調子で窘めると、二人とも不満そうな顔をした。

「えぇ〜」
「別に良いじゃないですか、大佐ぁ」
「そうだそうだ、1000万ガルドって訳じゃねぇんだし」
「ねぇー」
「なぁー」

二人は仲良く顔を見合わせて、頷き合った。

その時、前方で買い物をしていた彼らの仲間が、財布を覗き込みながら、あら?と首を傾げた。

「どうしたの、ナタリア?」
首を傾げる王女に、髪の長い少女が訊ねた。

「それが、ティア。
1000ガルド足りませんの」

――落としたの、お前かー!!

と心中で叫んだ少年少女は、損したような得したような、そんな複雑な気持ちで、1000ガルドを財布を持っている王女さまに渡した。



「あら、今度は5000ガルド足りませんわ」
「もうお前、財布持つな!!」


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アトガキ
いつの間にか、1000hitを越えていましたので、記念小説です。
フリー配布…とか考えているのですが…いる人、誰かいます?
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