妄想背徳




「ねぇ、兄上?」

俺を押し倒したジェイドが耳元で、ゆったりと囁く。
その上、夢の中と同じように、「兄上」と俺を呼ぶのだ。

「兄上、私はとても寂しかったんですよ?兄上に避けられ続けて」

そのまま耳朶を甘噛みされて、背筋がゾクリとする。

「ひ…っ!
だから、それは…悪かった、って…」

やや潤んできた視界にジェイドを捕らえれば、彼は非常にイイ笑顔を浮かべていた。

「ダメです」
「え゙…!?」
「今夜は、兄上が気絶するまで放してあげませんから」

あぁ、笑顔が輝いている…。
しかも、今夜はあくまで俺のことを「兄上」と呼ぶつもりらしい。




「んぅ…っ、ん、っ」
「は…、兄上、あにう、え…」

ジェイドは絶え間なく俺にキスを与えつつ、右手の指先は胸を摘まんだり転がしたりと好き放題に弄り、
左手は腹筋をなぞり、脇腹に滑り、腹に戻って臍に指を突っ込んだりと、これまた勝手気ままに動いている。

「んんっ、ふッ、ぅん…ッ!は…っん、んんぅっ!!」

胸は弄られると背中がゾクゾクするが、腹の辺りは快感とも不快感とも言えないものが走り、体がビクビクと揺れてしまう。

と、ジェイドが少し顔を離して、笑みを浮かべた。

「兄上は、胸も好きですけど、脇腹や臍も好きなんですね。
さっきからビクビク震えて、とても可愛らしいです」

可愛らしいも何も、コンチクショウ!!と叫びたかったが、胸に爪を立てられ、臍に指を突き立てられては、俺に出せる声は、甲高い嬌声だけだ。

「ぃあぁァあっ!!」

強く背が反る。
イけはしないけど、もう一押しあれば俺は、自身に触れもせずにはしたなく精液を吐き出していたと思う。

クスクスと、ジェイドの楽しそうに歪んだ笑い声が聞こえる。

「本当に、兄上は可愛らしいですよね。
そうだ、今日は兄上のオチンチンには触らないでみましょうか」

クスクス。

正直な話、俺もジェイドも、何かに酔ってるんじゃないかってくらい、歪んできていた。

俺は次第に、弟(ジェイド)に犯される羞恥と興奮を感じていたし、
ジェイドもきっと、普段よりも歪な独占欲に囚われている。


腹部と胸から離れた手は、本当に完全に勃ち上がっている性器を素通りし、膝裏を抱え上げた。
そして、胸に付くくらいまで体を折り曲げ、その苦しい体勢を自分で保っていろと、ジェイドは俺に膝を抱えさせた。

腰が宙に浮いて、まるで蕾をジェイドに差し出しているような姿勢に、俺は更に羞恥を感じ(そして興奮し)、じぃっと俺を見詰めるジェイドから視線を逸らした。

「なっ、何見てんだよ…ッ!」

声が上擦ってしまったが、仕方ない。と思うことにする。

ジェイドが、指先で蕾をぐっと押すと、ほんの少しだけだが、すんなりと入ってくる感触がした。

「んぁッ!!」
「さっきから物欲しげにパクパクしてるんですよ。
兄上のココは、正直で可愛いですね」

あまりの恥ずかしさに、ギュッと目を瞑ると、蕾から指が抜けて、代わりに滑った感触が蕾の周囲を這い回り始める。

慌てて目を開けると、案の定、ジェイドが蕾を舐め回している。

「やッ、やだ、ジェイド…ッ、あッ!」
「それは、濡らしもほぐしもしなくて良いから、早く突っ込んで欲しい、ということでしょうか、兄上?」

指先でまた、蕾を揉みながら答える、やたら楽しそうな声。
肯定したら、絶対実行される。

――下半身を血に染め、痛みに喘ぎながら、征服者の歪んだ笑みを浮かべる弟(ジェイド)に揺さぶられ、犯される俺。

ゾクン、と悪寒にも似た快感が、背筋を駆け上がる。

蕾が僅かに緩み、我知らずジェイドの指を食んでしまう。

それに気付いたジェイドが、淫靡な笑みを浮かべる。

「おやおや、兄上はとんだ淫乱なのですね。
無理矢理犯される想像をして感じてしまうなんて」

現実にしてさしあげましょうか?

囁きながら、いつの間に取り出されたのか、ジェイド自身の切っ先が蕾に触れる。

俺は恐怖を(期待を)浮かべた顔で、ジェイドを見上げる。

「い…、痛いのは、イヤだ…」
「では、ゆっくりと。
じっくり味わってください、兄上」

呼吸に合わせて、パクパクと開閉していた入り口が、ジェイドの先端をゆっくりと飲み込む。

先ほど舐められていたとはいえ、さほど潤っていない上に、太さに慣らされてもいない内側が、徐々に押し広げられていく。

「ぅあ…ッ、あ、あ、ぃあァ…ッ!」
「兄上、息を、ちゃんとして下さい…っ!」

切羽詰まった声で、ジェイドが促す。

「は…ぁ、はぁ…ん…」
「進めますよ?」

再び、圧迫感の進行が始まる。
今度は、呼吸を忘れないように…。

「は…ぁッ、あァッ、ん…ぅッ、はん…っ!!」
「は…ぁ、よく頑張りました、兄上。
一番奥まで入りましたよ、解ります?」

小さくジェイドが腰を前後させると、俺の奥の方がジン…と疼く。

「ん…ッ、わか、る…」

意識すると、俺の中にギチギチに詰まっているジェイド自身が、ビクビクと脈打つ様も感じ取れる。

その感触にまた感じてしまい、キュウッと蕾を締めてしまった。

「……っ!もう、動き、ますよ…っ」
「え、あッ、やァっ!!
んぁッ、ぁはっ!!んんぅっ、はんッ!!」

まだ解れていない硬い腸壁をゴリゴリと擦られて、俺は痛みと、前立腺を強引に揉まれる快楽とを同じくらいに感じていた。

「ったい、いた、いぃ…ッ、あァっ、んぁッ、は…ぁんっ、んん…ぅっ、き…もちぃッ、ぃた…ぁ、あぅっ、んんッ!!」
「痛くて、気持ち…良いんですかっ?
兄上は、本当にっ、ドMの淫乱です、ねっ」

皮膚と皮膚がぶつかる音。
俺の先走りと、ジェイドのそれが俺の蕾の中で混じり合う水音。
荒い呼吸。
ジェイドの吐く、侮蔑の言葉。

全部混ざって、俺を耳からも犯してくる。

「はッ、あっ、い、んらん、じゃ、なぃ…っあぅッん!」
「淫乱ですよっ、アナルを、無理矢理、に広げられて、こんなにっ、大喜びしてる、んですからっ」
「あっ、あっ、いあァっ!」

緩んできた蕾に、ジェイドは角度を変えて、前立腺を直接貫く。

「やぁァあっ!あっ、うあッ、あぁっんッ!イ、く…ぅッ、イ…っちゃ…ぁうッ!!ひァぁあァッ!!」
「く、あ、兄上…っ」

勢いよく熱が注がれる。
その感触に体を震わせながら、俺は結局、一度も自身に触れられずにイったことに溜め息を吐きたくなった。



*****

「兄上♪」
「…なぁ、ジェイド。
いつまで、その呼び方?」

その後、風呂場で後処理と称して3ラウンドほど行われ(そこで俺はようやく気絶した)、
今は汚れていないベッドで、後ろからジェイドに抱き締められている。

「そろそろ俺、自分の名前、忘れそう」
「じゃあ、ルーク兄上でどうですか?」

凄く上機嫌に返されて、困る。

"兄上"、良い響きだ。
でも、ジェイドにそう呼ばれたんじゃあ、俺はジェイドに甘えられないみたいじゃないか。

そう訴えると、ジェイドは少し考えて頷いた。

「それは困ります」
「困るのか?」
「困ります、ルークに甘えてもらえないのは。
寂しいとも言いますが」

真面目な顔で宣言されても。
脱力した俺を、誰が咎められようか。

「では、寝ましょうか、ルーク」
「ん。おやすみ、ジェイド」

――今日の夢は、平穏でありますように。



あとがき。

弟(ジェイド)に良いようにされる兄(ルーク)。
呼んでるだけですが、こう…暗示的な?←
その背徳性に取り付かれちゃった話です。
こんな暗いエロになる予定ではなかったんですが…(汗)

2011/8/30改訂


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