ハジメテさんと末期さん



「好きだ」

ぽつん、と言われた言葉に瞬きを繰り返し。

真っ赤に染まった頬を目にして、口元が自然と緩んでしまったのは仕方がないだろう。

「私も好きですよ」




*****

想いが通じたら、欲しくなる。

当然の欲求だろう。

手袋を外し、指をルークの頬に滑らせる。
ルークは気持ち良さそうに目を細める。
首を傾げるようにして、擦り寄られると、暖かいものが胸を満たした。

柔らかい光を灯す翠の瞳。
その色に吸い込まれるように顔を寄せ、触れるだけのキスを落とす。

そっと離れ、至近距離で瞼に隠れた翠がゆっくりと現れる様を見詰める。

「ジェ、イド……」

揺れる声で呼ばれ、吐息が唇を擽る。

「ルーク」
「ん……」

もう一度、唇を重ねる。

今度は、ただ触れるだけでなく、下唇を舐め、そのまま驚いたように緩んだ唇の内側へ舌を差し込んだ。

「ぅむ…!?」

目を開いたルークに、目だけで笑い、奥へ逃げ込んだ舌を舐め、絡める。

「……っん、ぅ…ふ…」
「ん……」

舌を動かす度に水音が弾け、恥ずかしそうにルークは再び目を伏せた。

しばらく、ルークの唇を楽しんで、名残惜しく離れる。

銀の糸がつぅ、と引き、ふつりと切れた。

「はぁ…ふ…」
「は…、ルーク…シても良いですか…?」

熱を孕み始めた翠を覗き込み、問う。

ルークは、パチパチと瞬きを繰り返し(その様すら可愛らしいなんて!)、きょとりと首を傾げた。


「何を?」


「………え?」


キスなら今したし…、とブツブツと呟くルークを見て、とある考えに行き着く。

確かに、その可能性は考えていた。

しかし。

ルークの肩を掴み、真剣な顔で訊ねた。

「ルーク、セックスって知ってますか?」
「聞いたことはあるけど、よく分かんねぇな」
「子供の出来方は?」
「ローレライが作って、女の腹ん中に入れとくんだろ?」

……あぁ、もう確実だ。

「では、ルーク。朝からここが盛り上がってることや、尿以外の何かが出たことは?」
「はぁ?んな病気、かかったことねぇよ」



「…………」

これはアレだろうか、私が一から教えろと、そういうことだろうか。

「ジェイド?」

しかし、考えようによっては、ラッキーかも知れない。
なにせ、最初から私好みに育てられるのだから。

「ジェイドー?」

それと同時に、生殖についても教育すれば完璧だ。

「ジェイドってば!」
「……はい?」

何度も呼んでいたらしい。

ちょっと怒って、私の腕を掴み、睨み上げてくるルーク(可愛い)。

「で、何をするんだよ?」
「ちょっと、私と恋人用のお勉強をしましょうか」
「勉強ぉ?何でぇ?
……つか、恋人って…」

勉強を嫌そうにし、恋人という言葉に照れるルーク(可愛い)。

「まず、ソコ…男性器からは、尿だけでなく白い粘液も出ます。その粘液を精液と呼び、これが子供の元となる内の1つです」
「へぇ〜」

突然説明しだしたにも関わらず、ルークは興味津々といった様子で聞いている。

「そして、子供というのは恋人や愛する者同士で作るのです。その子供を作る行為こそがセックスであり、逆に言えばセックスとは恋人や愛する者同士で行う行為なのです」
「ふんふん」
「ですから、ルーク」
「ふぇ?」

真面目に頷いていたルークに、ニコリと笑い掛ける。

「私と、セックスしましょう?」
「う…っ、あ、うん…」

ルークは、顔を赤くして、こくりと小さく頷いた。





*****

ベッドに胡座で座り、その膝の間にルークを背中を向けて座らせる。

下半身は、何も纏っていないので、ルークは恥ずかしそうに股間を両手で覆っていた。

「では、ルーク。
貴方は初めてですので、今日は精液とはどのように出るのか、精液とはどのような物なのか、を学んで下さい」
「ん、分かった」

緊張したルークが、何とか頷いた。

「まず、私がやって見せますので。ルークは、この感覚に慣れるため、ただ感じていて下さい。私の腕にしがみついても構いません」
「うん」
「では、触りますよ」

そう声を掛けて、そっとルーク自身を握った。

手を退かせて見えたルーク自身は、未だ皮を被り、少し覗く先端は、可愛らしいピンク色だった。

「ふ…」
「まずは、痛みを感じない程度に握り、ゆっくりと揉みます。マッサージするようにね」
「ん…んん…」

横からルークの顔を覗き込むと、ルークは目を伏せて、目元を赤く染めていた。

「少し膨らんできましたね…」
「あ…、ん…」
「今度は、握った手の平で、擦るように扱きます」
「あっ、んッ」

徐々に芯が通り、硬くなっていくルーク自身。

「この際、この皮で擦るようにしても、気持ち良いですよ」
「やァっ、あッ、んぅッ!」

皮が大きく上下する度に、敏感な亀頭が露になるのが感じるのか、ルークは腰を捩り、私の腕を掴む。

「このスピードを徐々に早くしていきます」
「はッ、ぁんッ、んッ、…っ!」

擦る手を早めると、ルークは唇を噛み締めた。

空いた手で、ルークの唇をそっとなぞる。

「ルーク、声は殺さないで下さい。苦しいでしょうし、唇が傷付いてしまう」

何より、私がルークの可愛い声が聞けないではないか。

「でも…ッ、はずかし…ッ!」

潤んだ瞳をこちらに向け訴えられると、理性が旅立ちそうになる。

「大丈夫ですよ、とても素敵な声です」
「……ッ、ばか…、…ァッ」
ルークはふい、と目を逸らし、唇を噛むのを止めた。

「イイ子ですね。
擦りながら、時折、陰嚢や先端を弄ると、より良いでしょう」
「ヒんッ、んぁッ、あぅっ、それ…ッ、やだ…、ぁッ、しない、で…ッ!!」

陰核をもう片手の指先で摘まみ、コリコリと転がすと、ルークの爪先がシーツを蹴った。

「そうですか?では、先端を…」
「やぁァっ!あッ、ぁんッ、ぁはッ、ぁあっ!!」

陰核を弄っていた手を離し、今度は先端を円を描くように刺激する。
ルークは、びくっと背を反らした後、逃げるように背中をぐいぐいと押し付けてきた。

「ふふ、そんなに乱れて。よほど気持ち良いんですね?
そろそろ、出そうですか?」
「あっ、あんッ、わか…な…ァっ!……っ!!やッ、やだッ、な…んか、くるッ、きちゃ…ぁッ、でる…っ!」

ルークが激しく頭を振り、前屈みになる。

意に介さず、扱く手を更に早め、尿道口に爪を立てた。

「あぁァぁッ!ぃやァぁあっ!!」

びくんっ、とルークが背を跳ねさせ、熱いものが手に流れる感触がする。

「あ、あ、ん…はぁ…ッ」

びくびくと体を揺らしながら、ルークは数度、白濁を吐き出した。

「は…、はぁ…」

吐精して、全身が弛緩したらしく、ルークは全体重を預けてくる。

「さぁ、ルーク。これが、精液です」
「これ、が…」

ルークは伏せていた目を何とか上げて、私の手を濡らす白濁をじっと見詰めた。

「精通、おめでとうございます、ルーク」
「せーつー?」
「こうして、精液を吐き出すことを射精、初めての射精を精通と言います」
「ふーん。それっておめでたいのか?」

私の肩に頭を預けた状態で、見上げてくる。

先ほどの余韻で潤んだ瞳、紅潮した頬、まだ少し乱れている呼吸。

理性を総動員せねばならないなど、滅多にあることじゃない。

「えぇ、おめでたいですよ。
子供を作れるようになった、即ち大人になったのですから」
「そーなのか!」
「ですが、言い触らしては、いけませんよ?」
「何で?」
「これは、恋人同士でやることだからです。
恋人同士の秘密なんです」
「そーなのか?分かった」

素直に頷いたルークの頬にキスを落とし、ベッドに横になるように言うと、ルークは不満そうに唇を尖らせた。

「ジェイドは?」
「私は、手を洗ってきますから。ルークは疲れて、もう眠たいでしょう?」
「ゔ〜…すぐ、戻ってこいよ?」

上目に睨まれると、どうにも不味いんですが。

そんなことはひた隠して、微笑む。

「えぇ、勿論です」
「ん。じゃ、先に寝てる。
……おやすみ、ジェイド」

さっき使ったベッドを降り、ルークは隣のベッドで横になる。

それを見届けてから、私は努めて冷静に、かつ急いでトイレに駆け込む。

その際、少しだけ舐めたルークの精液が甘いと感じて、私はもう、相当な手遅れだな、と天井を仰いだ。







あとがき。
初体験ルークと、既に末期症状ジェイド。
性教育と性行為を平行して行うジェイド(笑)
ルークの白濁塗れの手でGをして、さらに興奮しちゃうジェイド(笑)とか、今度書こうかな…(笑)


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