仮装大賞



幼馴染みって、本当に厄介だ。

と、ルークは痛感していた。

「ルーク、今年は仮装しないんですか?」
「しない」
「確か、去年もそう言って、結局仮装しましたよね」
「しないっつの」
「今年の衣装、随分良い出来なんですよ」
「絶対、しねぇ」
「貴方が12歳の時の衣装並みに素晴らしい出来なんですが」
「何と言われても、やらねぇ」

通学中も、ずっと同じ問答だった。
帰路では更に、今までの仮装遍歴まで持ち出してきた。

何の仮装か?
もちろん、ハロウィンの仮装だ。

ルークの衣装は、大体が魔女。
双子の兄、アッシュは狼男だと言うのに、何故魔女なのか。
駄々を捏ねたら、一度だけ猫娘の衣装になった。が、凶悪だ(何が?とルークは悩んだ)という理由で、その衣装は封印された。

ちなみに、その猫娘の衣装だったのが、12歳のハロウィンだ。

「何がそんなに嫌なんですか?」

ふぅ、と溜め息を吐いたジェイドを殴り飛ばしたい、とルークは思った。

「だって、また女装なんだろ。お前は、吸血鬼なのに」
「えぇ、貴方は吸血鬼より魔女っ娘ルックがよく似合いますから」

さらっと答えたジェイドを殴り倒そうと、ルークは真剣に考えた。

「そもそもルーク、以前ミイラ男の衣装を来て、包帯踏んで、大転倒した時に、もう女装に文句は付けないって言ったじゃないですか」
「そんな昔の事、覚えてねぇよ!」
「大丈夫です、私は覚えてますから」

にこり、と微笑んだジェイド(キモい)の殴り倒し方を、ルークは検討し始めた。

「つか、もう包帯踏んだくらいじゃ転ばねぇよ。
それ以前に、踏まねぇし」

どうだか、と言葉に出さずに視線で語ったジェイドに、よし、殴り倒すぞ、とルークは拳を握った。

「では、こうしましょう」
「………んだよ」

わざとらしく、ポンと手を打ったジェイドを、半眼で眺めて、ルークがいやいや返事する。

「スカートの下に、スパッツを穿けば良いんですよ」

爽やかな笑みが、ルークにはとても胡散臭く見えた。



*****

最終的に、作った人が可哀想だから、と丸め込まれたルークは、
ミニスカートの下に、黒のスパッツを穿き、脹ら脛の中程までのオレンジ色の靴下(コウモリのワンポイント付)、黒のローファを着用させられた。

ルークの不満とは裏腹に、その格好はとても好評だった。

翌日、魔女っ娘ルークの写真が密売されかけたそうだが、それは吸血鬼の手により阻止され、犯人も写真も、何より事件自体がルークの耳に入ることはなかった。




後書き。

ハロウィン小説です。
犯人は、金髪のあの人です。
写真は、ジェイドのコレクションに追加されました。

11,10,31 完結



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