無自覚デート



「なー、ジェイド」
「はい、何ですか、ルーク」

ファストフード店で、ずぞぞぞと濁音の多い音をたててシェイクを啜りながら、ルークはテーブルの向こうの端正な顔を見る。

コーヒーを飲んでいた男は、何故か無駄に笑顔だ。

「何かオレら、毎日会ってねぇ?」
「おや、そうですか?」

ジェイドは、無駄な笑顔をちらりとも動かさない。

白々しいヤツ、とルークは半眼になってしまう。

「毎日、オレの通学路に待ち伏せてるくせによ…」
「そうでしったけ?」

あぁ、その笑顔が無性に腹立たしい。
しかし、シェイク代はジェイドの懐から出ているのだ、いきなり殴るのはよろしくないだろう。

「そんだけ会ってんのに、オレまだ、アンタが何してんのかすら知らねぇんだけど」
「あぁ、まだ話してませんでしたっけ」

これはどうやら話してくれるらしい。
そう思って、ワクワクと身を乗り出した。

「私の職業、何だと思います?」
「―――あ?」

ニコニコと問い返されて、ルークは思わず凄むように返してしまった。

「ですから、私の職業、当ててみて下さい、と言っているんです」

ジェイドの笑顔は崩れない。
むしろ、パワーアップしている。
面白がっているのだろう。

「あー…、サラリーマン…はあり得なさそうだな…」

ノってやる自分も律儀だな、と思いつつ、ルークは真面目に考えてみる。

「えぇ、違います」
「医者」
「近くなりましたが、違います」
「だろうな。アンタは命を救うより、実験に使ってる方が似合うもんな」
「…………」

ルークの正直なコメントに、ジェイドが鼻白む。

「研究者」
「以前はそれらしいこともしてましたが、今は違います」
「えー、似合ってるのに。
何か、フランケンとかゾンビとか作ってそう」
「……本当に作って、けしかけますよ?」
「え、作れんの?」
「…………」

ルークのキラキラした期待の眼差しから、ジェイドは目を逸らした。

「今の時代、死体は全て火葬ですから、材料がありません」
「あ、そっか」

それで納得するのか、とジェイドはまた鼻白んだ。

「小説家?」
「私の書いた小説を読んでみたいと思いますか?」
「ごめん、遠慮する」

即答だった。
ジェイドは、自分でも気付かないほど落胆する。
そして、いつか絶対に書いてやる、と明後日な決意を固めた。

「あとはー、教師?」
「まぁ、当たらずとも遠からず、ってところですね」

ジェイドはとても曖昧な答え方をしたが、ルークは全く気にならなかったらしく、へー教師かーふーん、などと呟いている。

それからルークは、嬉しそうににっこり笑った。

「……何です、そんなにニコニコして」
「いや、だってさ。また一つ、ジェイドのこと、分かったなぁって」

「………そうですか」

ジェイドは、視線をコーヒーに落として、何でもない風に一つ頷いた。



こんな日常が、今の彼らの幸せなのだ。






唯一の不幸は、傍目からは歴としたデートである状況に、二人が気付いていないことだった。



後書き。
abyss、3DS版発売記念『お久し振りです、初めまして』の続きです。
無自覚にいちゃつくジェイルク(笑)
下に、少しおまけ(むしろコッチが本編(爆))

11,04,05 完結







*おまけ*


「生物の先公、寿退職だってよ」
「はぁ?マジで!?」
「新しい先生、どんなんだろうな?」
「おい、来たみてぇだぞ!」
「はい、席に着いてー。新任の先生だ。生物を担当される」
「生物担当、ジェイド・カーティスです、よろしく」
「!?」
「おい、ルーク、あいつ…!」
「ルーク、おい、ルーク?」




ルークの学校の生物担当が、ジェイド(笑)
いつか、パロ部屋で書いてみたい



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