「リリアン。すき、すき。」
あれからなんやかんやあって、Nと私は行動を共にしている。
Nはいつも突然に、私を好きだと言う。
いつも、とは言うものの、誰かに好意を露わにされることには慣れていない。
Nに一回、また一回。
好きだと言われる度に朱に染まる顔を隠している。
しかし、Nはそんなこともお構いなし。
「リリアン、すき。だいすき。」
小さな子供が母に甘えているような、そんな姿を無下にはできない。
私は大人しくNの腕に抱かれる。
私達の周りに人がいないのが唯一の救いかもしれない。
「リリアン。」
「なに。」
「リリアンは、僕のことすき?」
「好きだよ。」
いつもの会話。
Nの好きは、子が母に言う好きと同じものだ。
そう思うと、好きだと言うことには余り抵抗を感じない。
「僕は、リリアンの中で何番目?」
「何番目って…そんなの決められる訳ないじゃない。」
「決めて。」
「んなこと言われたって…。」
今までこんな質問をされたことはなかった。
唐突なNの質問に、戸惑いを隠せなかった。
私がどう返そうか、悩んでいる時にちらとNの顔を見ると、寂しそうな顔をしていた。
「え、ぬ」
「リリアン。」
Nが真剣な眼差しでこちらを見る。
めったに見せないその表情に、心臓が跳ね上がる。
「僕はね、リリアン。」
私を抱きしめていた腕をほどき、今度は肩を掴む。
顔の距離を縮めて、Nは言う。
「リリアンのこと、何よりも、トモダチよりもだいすきなんだよ。」
だから、とNは続ける。
「だから、リリアンも僕のこと、一番好きになって。」
大きくて小さな子供から一変、年相応の男性の顔になったNに改めて愛を囁かれた私は、赤くした顔を隠すことすらままならなかった。
見た目は大人、中身は子供なN。
リリアンがまったくガサツじゃない件。