がたがた、がたがた。
トラックにゆらゆら揺られて、もうどれくらいかな。
ハルカは荷物の隙間に寝転んだ。
寝っ転がったせいでトラックの振動がより明確に伝わる。
その振動にどこか心地よさを感じたハルカは、静かに瞼を閉じた。
それから少し経って。
「ハルカ、起きなさい。」
「ん…ママ…?」
「新しいおうちに、着いたのよ。」
「わっ!ほんとう!?」
母親に起こされ、引っ越し先に着いたことを知らされたハルカ。
先程までの寝ぼけ眼は何処、トラックから飛び出して新居の庭を駆け回っている。
荷物を運んでいるカイリキーにちょっかいをかけていると、母親に呼ばれた。
「ハルカ、あとはママがやっておくから、オダマキさんの所に挨拶に行ってきて。」
「オダマキさん?」
「お隣に住んでいるポケモン博士よ。」
「博士?!すごい人がお隣さんなんだね!」
「ふふ、行ってきてくれる?」
「うん!」
じゃあこれ。と、母親に挨拶用のお菓子を持たされたハルカは、元気よく家を飛び出した。
お隣さんとはいっても、間隔は少し広いため小走りで向かう。
目的の家にたどり着き、なんの躊躇いもなくインターホンを押す。
すると、すぐに優しそうな女性が顔を出した。
「あら、どちら様かしら?」
「あっあの!今日隣に引っ越してきたハルカです!あのこれ、よかったら!」
しゅっとお辞儀をしてお菓子を差し出すと、女性は笑顔で受け取った。
「まあまあ、わざわざありがとう。私はオダマキの妻です。主人いなくて申し訳ないけど、よかったらうちでお茶でも飲んでいく?」
「あ、じゃあママに聞いてきます!」
「あら、あなたのママには私から言っておくわ。」
「そうですか…えへっ、じゃあおじゃましまーす!」
流石に人様の家なので、静かに動くハルカ。
自分の家より幾分か大きい部屋をきょろきょろ見回している。
すると、女性に呼ばれてテーブルの方に向かう。
「ハルカちゃん。ここにどうぞ。」
お礼を言って、席に座ろうとしたら、女性が上の階に向かって声をかけているのが聞こえた。
「ユウキー!お客様がみえてるのよ!降りてらっしゃい!」
しかし、返事はない。
気になったハルカは、素直に聞くことにしたが。
「ごめんね、ハルカちゃん。うちの子を紹介しようと思ったんだけど、聞こえてないみたいなの…。ちょっと呼んでくるわね。」
と、女性が言って階段を上がろうとしたのをハルカが制止する。
「よかったら、あたしが呼んできますよ!」
「あら、いいの?」
「はい!」
「じゃあ、お願いしちゃおうかしら。部屋は二階に上がってすぐあるからね。」
「はーい!」
ハルカはテンポよく階段を上がる。
一体どんな子だろう。
そんな期待が彼女の足取りを軽くしていた。
階段を上り、すぐに見えたドアをノックする。
すると、中から声がしたので、ドアを開けて部屋に入った。
中では黒髪の男の子が机に向かっていた。
ハルカは男の子に近づいて、挨拶をした。
「こんにちは!隣に引っ越してきたハルカです!」
「え、君が…?」
そう言って男の子がハルカの方に振り返った。
その時、一瞬互いの時が止まった。
「(え、女の子だったの!しかも凄く可愛い子なんだけど!)お…僕はユウキ。オダマキ博士…父さんの助手をしてるよ。よろしくね。」
「(う、うひゃーっ、こんなにかっこいい男の子だなんて思ってなかったよー!)う、うん!よろしくね!」
ハルカはにこっ、と朗らかな笑顔で返事をした。
「(おお笑った顔も凄く可愛い。なんだかドキドキする)ジムリーダーの子供って聞いてたから勝手に男だと思ってたよ。」
ユウキはあははっ、と軽く笑った。
「(笑った顔もかっこいー…やだ、あたしすごいドキドキしてる!)えー、ひどーい。」
二人で笑い合う。
ふと、ハルカが本来の用事を思い出した。
「あっ、そうだ!あのね、一緒にお茶飲もうってユウキ君のママが誘ってくれたんだけど、ユウキ君も一緒にどお?」
ユウキは迷った。
父の研究に必要な資料をまだ纏め終わっていなかったから。
だが可愛い可愛いハルカの誘いを無下にはしたくない。
そんなユウキから、驚きの言葉がこぼれる。
「ハルカが僕のおよめさんになってくれたら。」
言った後に思っただろう。何をほざいてるのか自分は、と。
血の気が引くのがわかった。
出会って間もない女の子に、無意識とはいえ妙な言葉を口走ったのだから。
だが、ハルカは。
「うん!あたし、ユウキ君のおよめさんになりたい!」
こうして二人は付き合い始めたという。
運命の出逢いから二分後のことだった。
無駄に長い癖にオチが迷子。
要点も迷子。