「コトネ」

ポッポの鳴き声に混じって、聞き慣れた声が耳に入ってくる。
一番近い男の子。
幼なじみのヒビキ君の声。
私は寝返りをうって、身体を彼の方に向けた。

「おはよう、コトネ。」

にこっ。
ヒビキ君が笑った。
まだ半分目が開いていなかった私は、へらと笑いかえすだけ。
あーあーすごい寝癖だなーとか言いながら私の髪をいじくるヒビキ君。
私はそれに対抗して、ヒビキ君の髪をわしわしとかき混ぜる。
すると、ヒビキ君は更に私に攻撃を仕掛けてきた。
髪から手を離し、離した手が私の身体に伸びてきた。

「いい加減に…」

その言葉と同時に、ヒビキ君の指が私の身体を滑る。
あ、これはまずい。
そう思った時既に遅し。
ヒビキ君は無遠慮に私の身体を擽り始めた。

「しろー!」

「きゃはははははっ!」

擽りにめっぽう弱い私は、直ぐに笑い声を響かせた。
笑いすぎで苦しい。
ひゅーひゅーと、空気が混じる声で小さく降参の意思を見せた。
するとヒビキ君は、勝ち誇った顔をして、私の身体から手を離した。

「ヒビキ君ー、さっきのは反則だよー。」

「だってコトネ、全然起きようとしないんだもん。まだパジャマだし。」

「だったら、」

一緒に寝てたんだから、ヒビキ君もでしょ?
そう言おうと思って、彼の姿を見たら、きちんと身支度が済んでいた。

「自分だけずるいー!」

「だって僕は、コトネを起こす前に全部済ませたもん。」

ね?と、私のバクフーンに同意を求めている。
バクフーンはうんうんと頷いている。
私は何も言い返せず、頬をふくらました。

「ほらほら、むくれないでよ。今髪の毛やってあげるから。」

気がついたら後ろにヒビキ君がいた。
私はベッドの端にすわり、ヒビキ君はベッドの上で膝立ちをしている。
ヒビキ君が髪の毛をやってくれているので、今のうちに着替えようとパジャマのボタンを外した。
すると、髪を触っていたはずのヒビキ君の手が、私のパジャマを押さえている。

「ヒビ、」

「着替えは…僕が部屋を出てからにしてよ…。」

「いいじゃない、幼なじみなんだし。」

「幼なじみ、だからだよ。」

ヒビキ君の言っていることはいまいち分からなかったが、ここは大人しく従うことにした。
髪の毛をある程度整えたヒビキ君が部屋を出て行く時、その耳が赤かったような気がした。





一緒に寝ても裸はNG。
思春期なヒビキとやや鈍いコトネ。




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