自動ドアをすり抜けカートにカゴをセットしてものの1分程でカゴがマヨネーズのボトルであふれんばかりになる。いつものこととはいえ、周りからの視線が痛いです。
「ちょっと、他のものが入らないでしょ」
つぶれないようにレタスをカゴに入れます。大きなカートにしなかったことを後悔したけど、今更変えるのも億劫だからそのままにしておきました。
「今日は好きなモン買っていいっつったのはお前だろ」
「限度ってものがあるでしょ。それに好きなものっていつもと変わらないじゃないの」
上司の近藤さんが気を利かせてくれたらしくて急に早く帰ってくることになったので、特にディナーの予約もしてなかったし、ご飯も一緒に食べるのは無理だと思って何も用意していなかったんです。
でも、せっかく誕生日なんだから、好きなおかず作るよって意味で言ったんだけどいまいちトシには伝わってなかったようです。
「第一誕生日なんて祝う歳でもねえし、メシもいつもと同じでいい」
「じゃあ唐揚げで」
「…お前本当唐揚げ好きな」
「うちの実家じゃお祝い事は必ず唐揚げなんです。それにマヨに合うから好きだって言ってたでしょ」
コレステロールとか健康が心配だから少しは控えてほしいけど、言っても効き目はあまりないから言わないでおきます。
漬け込むタレ用の生姜を取って、お肉のコーナーで鶏肉を探します。明日のお弁当のことを考えて、少し多めに入ったパックを手に取りました。
「あとは特に買うものないかな?」
少し後ろからついてくるトシを振り返ると、どこから取ってきたのかビールと缶チューハイを一つずつ持っていました。
「せっかく祝うんならこれ位ねえとつまんねえだろ」
顔を見ると、ちょっと照れているのかよそを向いています。素直じゃないのは前からだから知ってるけど、言うと怒るから何も言わずに笑って缶を二つ、受け取ってカゴに入れました。
「ごめんね、いつもと同じものしか用意できなくて」
レジに並んだところで、カゴの中身がほとんどいつもと同じなのに気づいて、ちょっといたたまれない思いになりました。けどトシは、私の頭をくしゃりと大きな手でなでてくれました。顔を見ると、すごく優しい目でした。
「いつもと同じで、十分だ」
今日もあなたと、Hello,Day
毎日にあなたがいることが、幸せなんです。