LOVERS IN CAR





静雄は煙草を吸おうとして、臨也にぺしんっと手を弾かれた。ムッとして臨也を見るが、臨也は前にだけ集中している。どうせ動かないのに…と静雄は心の中で呟いた。臨也の運転する車は、日曜日の渋滞にはまっていた。




「臨也、日曜、どっか行かねえ?」

話を持ちかけたのは静雄の方だった。次の日曜日は臨也も休みであることを静雄は知っていた。静雄はぺらぺらと旅行情報誌を見ながら言う。臨也はソファに寝そべりながら、いいよーと適当そうに返事をした。ドラマの再放送を見ているようだ。

「…なんだよその返事」
「シズちゃん、しっ!…ああ、そうだったのか…このドラマおもしろいなぁ、なかなかの出来だよ」
「……」
「…で?なんだっけ?」
「死ねよ!」

静雄は機嫌を損ねてダイニングから臨也に雑誌を投げた。臨也はそれを笑いながらキャッチする。臨也は起き上がり、ソファごしに静雄を見た。

「いいよ、行こうか。どこがいいの」
「……アウトレットとか」
「ああ、成る程ね。デートっぽいね」
「、……別に、デートとかじゃっ」
「シズちゃんとデート、楽しみだなぁ」

臨也はにっこりと笑うと、またテレビの方へ姿勢を戻した。静雄はそっと椅子から立ち上がり、チェストに置いてあった卓上の小さなカレンダーの次の日曜日に、赤丸をつけた。その嬉しそうな表情を、密かに臨也が見ていたとは知らない。





「…充満するから煙草はだめ、シズちゃん。我慢して」
「……」
「行きはよかったんだけどなー、帰りこんなに混むとはね」

臨也はかけていた大き目のサングラスをはずした。夕日がだんだん沈んでいき、眩しくなくなってきた。日曜日、約束どおり二人は少し遠出をし、最近出来たばかりだというアウトレット施設へ車を飛ばした。運転は臨也がした。アウトレットはとても広く、一日かかって回った。静雄もジャケットやジーンズ、新しい時計も買うことができた。ちなみに時計は臨也が選んで買ったもので、既に静雄が腕に着けている。静雄の前の腕時計が壊れていたのを臨也は知っていたのだ。

「…それ、どう?」
「あ、…ああ。見やすいし、いい」
「よかった。アウトレットでもよかったの?」
「ああ、全然いい。…さんきゅ、臨也。大事にすっから、」

小さく呟き、シルバーの腕時計に静雄はそうっと触れた。臨也も満足そうに目を細めた。車内には洋楽がかかっていたが、もう既にCDが二周三周していた。渋滞はなかなか解消されず、ちょこちょことしか車は動かない。臨也はふう、と息をついた。

「夜中になるかもね、帰れるの」
「、そっか。…仕方ねえよな」
「ふうん?随分素直じゃん」
「俺が行きたいっていったしな。…その、臨也、運転…代わるか?」
「いいよ、このくらい。…でも次のパーキングエリアで休憩してもいい?ちょっと目ぇ疲れちゃった」

静雄はこくりと頷いた。明日は仕事だが、午後からなので余裕はある。しばらくすると、パーキングエリアの標識が見えてきた。臨也はとんとんと人差し指でハンドルを叩く。タイミングを見計らい、ウィンカーを左へ出した。車は一時的ではあるが渋滞から脱出する。

「はあ、…あー、すっとした」
「本当にすげえ渋滞だな…」
「日曜日って怖いね」

パーキングエリアはトイレと自動販売機が数台ある小さなものだった。車は数台停まっている。臨也は駐車場の一番隅に車を停めた。エンジンを切る。辺りが思った以上に既に暗くなっていることに気づいた。

「臨也、何かいるか?俺買ってくる」
「んー…コーヒー」
「わかった」

静雄は財布だけ手に車を降り、自動販売機へ向かった。コーヒーとミルクティーのボタンを押し、出てきた缶を持って車へ戻った。コーヒーの方を臨也へ渡す。

「ほら、」
「ありがとーシズちゃん。…ミルクティ?かわいいね」
「え、…っ…、いや、別に…」

臨也はくっくっと笑いながら、缶を開けて二口三口コーヒーを飲んだ。それをダッシュボードの近くに置き、リクライニングのレバーを引いた。運転席のシートが後ろに倒れる。

「やばいな、寝ちゃいそう」
「そしたら俺が運転して帰ってやる」
「え、それはちょっと怖い…。……」
「…臨也、寝るなよ?」

静かになった臨也に静雄は話しかけた。臨也は目を開けては閉め、開けては閉めを繰り返している。眠いのだろう。静雄はミルクティを置き、身を乗り出して臨也の額に触れた。くすぐったかったのか、臨也は目を開ける。

「…なあに?シズちゃん」
「あ、いや、…起きてるかなって」
「うん、起きてる。…でもちょっと眠いかな。起こしてくれる?」
「え、……あ、キス?」

臨也が目を閉じて静雄の方を向いてきたので、静雄は辺りに人がいないことを確認し、そっと臨也の唇に触れた。ちゅっ、ちゅっと啄ばむようなキスをすると、臨也は静雄の頭に手を寄せた。少し開いた唇から舌が伸び、静雄の口内へと入ってくる。

「ん、…んっ…、んう」
「……」
「、ふは、…いざ、」
「…シズちゃん、こっちこない?」

臨也はぽんぽんと自分の膝を叩いた。いつもの静雄なら躊躇したが、少しキスで頭がぼんやりとしていて、思わず頷いてしまった。靴を脱いで、間の缶を倒さないように跨ぎ、臨也の身体に張り付くようにして膝の上に乗った。

「……シズちゃん」

ちゅう、と再び唇が吸われる。静雄はそれに応えていたが、臨也の右手がシャツの中に入ってきたことに気づき、慌てて抗議の声をあげようとしたが、臨也はそれを許さず、もっと深くに舌を入れてきた。

「、んんっ、んう、んん」
「…、は…。…」
「、あっ、臨也…や、どこ触、」

臨也の細い指が静雄の胸の突起を探り当てた。くにくにと指で弄ばれる感覚に、静雄はびくんと身体を震わせた。シャツが捲り上げられ、胸が露になる。突起はぴんと張り詰めていた。

「かわいい、」
「あっ…あ、ひゃあ、あっ」

臨也の舌が突起を這う。至近距離で臨也と目が合い、静雄はぞくりと快感を背中に感じた。身体の力が抜ける。舌で転がされたり吸われたりと臨也はまったく止める気配を見せない。

「い、臨也っ…やめ、…み、見られ…」
「誰も見ないよ。もう外も暗いし。…それに、俺たちもどうせ渋滞で帰れない」
「それとっ、これとはっ…あ、やあ、っ…」
「眠気覚ましと思って。…ね、シズちゃん」

いつの間にかはずされたベルトが助手席へ置かれたのが見えた。ずる、とジーンズが下がる。臨也は下着の上から静雄自身を手で包み、揉んだ。既にそれは反応を示している。

「っ、んん!あ、臨也ぁ、」
「乳首で感じるなんて、本当シズちゃんってかわいいね」
「…、あっ…や、ひゃ、んっ…や、それぇ、」
「ちゃんと触ってるよ?」

下着ごしだけど、と臨也は笑う。静雄の耳にちゅっとキスをし、性器をぐに、と強く揉んだ。静雄は臨也の肩に手を置き、ぎゅうっと臨也のシャツを握り締める。臨也を見る瞳が涙ぐんでいて、とても愛らしかった。

「や、…や、臨也、手っ…」
「ん?」
「、ぬ、脱がしてっ…さわ…って、」

視線を逸らしながら、小さく静雄は言う。臨也ははいはいと答えると、静雄のボクサーパンツを下へずり下げた。ぶる、と勃起した静雄自身が顔を出す。静雄は舌なめずりをしてそれを眺めていた。するとなかなか触れてこない臨也に焦れたのか、静雄が性器をぐいと臨也の腹に擦り付ける。

「ん、は、…っ、ああ、あっ、あっ、」
「、ちょっとシズちゃん…勝手に俺の腹使わないでよ。シャツ濡れるし、」
「あ、…あ、ごめ、でもっ…」

臨也は苦笑しながら着ていたシャツを脱ぎ、それも助手席へ放った。臨也は静雄の性器にそっと触れた。手を動かしてやると、びくんびくんと静雄の身体が跳ねる。背中をハンドルにぴたりとつけ、静雄は快感に耐えた。

「ひゃ、ああっ…あん、あ、臨也あ、あっ」
「エッチだなぁシズちゃん。…車の中だよ?」
「ん、んっ…い、臨也っ…ね、るなよっ」
「俺を寝かせないでね、シズちゃん。……嘘、眠れないよ。こんなかわいいシズちゃん見りゃさ…」

臨也は静雄の腰を引き寄せ、耳元で低く囁いた。それだけでも快感に変わる。静雄はぎゅうっと自分のシャツを握り締める。

「は、はあ、あっ…も、出るう、いっちゃう、臨也、」
「うん、いいよ…」
「あ、あっあっ、はっ…ああっ!!」

びゅる、と勢いよく飛び出した精液は、臨也の上半身にべとりと付着した。射精しぐったりした静雄は、臨也の身体へ倒れこむ。臨也の鎖骨にまでついた自分の精液をぺろりと舐めた。臨也はそっと自分のジーンズのベルトをはずす。

「、はあ、はっ…臨也、悪い…」
「ああ、シズちゃんの?構わないよ。…舐めてくれるの?」
「ん、…」

れろ、と静雄の舌が臨也の鎖骨から胸へと落ちて行く。そのうちに臨也は自身のジーンズと下着を下ろした。既に勃起しているそれが静雄の尻にぺとりと張り付いた。静雄はそれに気づくと、頬を赤く染めながら舌を臨也の身体から離した。

「い、ざや…」
「…ちょっと待ってね。慣らすから」

まだ腹に残る静雄の精液を臨也は指に絡めとり、そのまま静雄の後ろの蕾へと挿し込んだ。ずぶ、と二本の指が一気に入る。

「ああ、あっ…入、…あ、あー…っ」
「また勃ってきたね、シズちゃん」
「だ、ってぇ、あっ……い、ああ、ひゃああっ」

臨也は静雄のいい部分を掠めるように指を動かす。静雄は臨也の上半身にしっかりしがみついていた。耳に近いところで喘がれ、臨也もそろそろ余裕がなかった。臨也は指をゆっくり引き抜く。

「、…指じゃ、足りないんじゃない?ねえ、シズちゃん」
「ん、た、たりなっ…もっとっ…抜いちゃ、いやぁ、」
「うん…シズちゃん、腰上げれる?」

静雄は後ろ手にハンドルを握り、ぐ、と腰を持ち上げる。臨也の先端が静雄の後ろに触れた。静雄は甘い視線で臨也を見る。臨也は口元だけ笑ってみせた。

「臨也、の…っ」
「うん…いいよ、おいで…」
「あ、…ああ、っ…お、っき、っ」
「頑張って…シズちゃん」
「ん、んんっ…あ、あ、あっ」

ずぶ、とだんだん静雄の中へ臨也が入って行く。臨也もはあ、と熱い息を吐いた。すると二人の乗る車に眩しくライトが当てられる。静雄はびくりとしてハンドルを掴んでいた手を離してしまう。支えられていた手がはずれて身体がずれ、ずずずっと一気に臨也のものが静雄の奥まで入る。

「、あああっ!あっ、ふあ、あん、あっ…!!」
「っ、シズちゃ、…締めすぎ、」
「い、臨也っ…」

静雄はそのまま臨也にぎゅうと抱きついた。車のライトは下向きに切り替わり、トイレのある近くへ停まったようだった。臨也は静雄の背に手を回し、抱き締める。ハイビームのライトが当たったのは一瞬だったし、見られてはいないだろう。

「シズちゃん、…大丈夫だよ、」
「、う、…ん、ん、」
「気づかれてないって。…大丈夫」

ちゅっと額にキスをする。静雄は顔を上げ、ちらりと窓から車を確認した。と同時に、臨也は下から突き上げた。静雄の表情が強張ったものから、また甘いものへと変わる。

「っ、ああ、あっ…い、ざや、っ」
「頭…気をつけてね」
「ん、んっ…ん、あ、あ、おく、」
「いいの…?どういう風に?」
「あっ…いざや、のがっ…あ、…あっ…すご、おく、あたって、っあ」

答えになってないよと臨也は笑った。口の端から垂れる唾液を指で拭ってやる。ぎっぎっぎっと車が揺れるのがわかった。が、もう静雄の意識は臨也以外に向かなかった。臨也は笑みを深くする。

「臨也っ…臨也、あ、臨也っ…」
「なあに?シズちゃん…」
「あ、…すき、臨也っ…いざ、」
「……うん、知ってるよ」

静雄が伸ばす手首に巻きついている、買ってやった腕時計がやけに光って見えた。臨也はその手を取り、腕時計にキスをし、そして静雄の唇へキスをした。キスをしながら、静雄自身へ触れる。先走りがぬるりと手に光った。

「んう、んっ…ん、は、あ、やあ…っ、も、」
「…愛してるよシズちゃん、」
「いざ、やぁっ…ひゃ、も、もお、だめ、いく、」
「、っ」

びくんっと静雄の身体が震え、ぼたぼたと自分の腹と臨也の手を白濁で濡らした。臨也も静雄の中へ欲望を吐き出す。静雄は臨也の胸へ倒れ、目を瞑った。





そして再び目を開けた時、そこは臨也のマンションの地下駐車場だった。停められた車内に、臨也はいなかった。静雄は寝ていた助手席からがばっと跳ね起きる。頭と腰がずきずきと痛んだ。

「いざっ…臨也…?」

きょろきょろと辺りを見回していると、マンションのエントランスへ続く扉から臨也が出てきた。臨也は静雄が起きているのに気づくと、走って車までやってきた。助手席の扉が開けられる。

「シズちゃん、起きた?ごめん、ちょっと先に荷物だけ部屋に上げたんだ」
「いや、…わ、悪いな」
「よく寝てたから、起こさなかったんだけど。…立てる?」
「ああ」

静雄はゆっくり助手席から降りた。臨也は車をロックし、静雄のゆっくりとした歩幅に合わせて歩いた。外はもう明るいようだった。エントランスの扉も、エレベーターも、全部臨也が先に開けてくれた。静雄はエレベーターの中でそっと臨也に寄り添った。

「…どうしたの?」
「……別に」
「…またデートしようね、シズちゃん」

臨也はふっと笑って静雄の手に自分の手を絡めたエレベーターが臨也の部屋の階に止まる。臨也は「開」のボタンを押した。二人は手を離すことなく、エレベーターから降りた。


201008

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