彼には、名が無かった。
齢8にして親に捨てられた彼には、名前は疎か、戸籍すら無かったのだ。
綺麗な深みのある赤い左目は、その色と対照的に冷え切っていた。
そんな彼に、俺は名を与えた。
誰よりも深く、濃い“夜”を背負う彼に、終わらない夜は無いのだと。
誰よりも賢く、光と影の両方を背負う彼は、まるで夜と朝の狭間に居る夜明けのようだと。
そんな意味を込めて、俺は彼に名を与えた。
ーー終夜 賢斗ーー
そう、俺は彼を名付けた。
catastrophe
by霜月 洸
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