ーーーチャリーン
「いらっしゃいませ〜あ、銀さん」
「よォ」
「あれ、今日は何?」
「何ってお前、髪切りに」

万事屋からは遠いのに、何故か銀時はここに来る。イスに座らせ髪を梳かすと、意志を持ったように自由に動く毛先。相変わらずの天パーだ。ご贔屓にしてもらうのはありがたいが、何せ天パーは切りづらい。ビショビショに濡してもすぐにくるっとなってしまい、何度指を切ったことか。
「あーあ。どれぐらい切ります〜?お客様ァ〜」
「オイ、それが客に対する態度か」
とりあえず邪魔にならない程度で、とのことなので、いっそ坊主にでもしてしまおうかと思ったが想像してやめた。似合わない。

「シャンプーするからさあ、向こうのイスに座ってシート倒して目にタオル乗っけてお湯出してて」
「オィイ!それが客に対する態度かァア!!」
「早く」
「はい」
なんだかんだ言って、私が言ったことを全てやってくれる。それもそうだ。料金を半額にしてやってるんだから。
一通り洗い終えたところで、ホットタオルで首のマッサージを行う。いっつも思うが、カチカチだ。
「銀さんさあ、ちゃんと休んでる?」
「仕事がねえ万事屋に対する嫌味か。あーそこちょっと強く」
「え、ここ?じゃなくて……はぁ。何でもない」

言っても無駄。分かってる。たまに頬や首筋にすら切り傷を作ってくるこの男。具体的な仕事の内容は聞いたことないけど、大体想像はつく。
「そんじゃあ切りまーす」
切り進めて気づく。今日は毛先が大人しい。順調に進んで最後に前髪に取り掛かると、銀時が目を開けてこちらを見てきた。前髪の束を掴み刃先を当てた状態のまま目があった。
「……目に入るよ」
「ああ」
「え、まさか入れて欲しいの?髪の毛……ドM?」
「……はぁ、何でもねえ」
溜息をつきそう話したあと、銀時は目を閉じた。


「終わったよ」
「おお、スッキリ」
結局いつもと同じヘアスタイルが完成した。いつもと変わらない、さっきよりはちょっとサッパリした銀時の完成。
「お会計は、」
「草子」
「なに?」
「いっつもありがとな」
突然、優しげな表情でそう言われた。余りに非現実的だった。あの男が感謝を述べたのだ。レジ前に立ち呆然とする私に、銀時は、なんだよと眉間にシワを寄せる。

「銀さん、いつもと違うことすると死亡フラグだよ」
「バカヤロー、俺にそれ言うとリアルじゃねーか」
「え、なに、どっか行くの?」


ーーー後から町の噂で聞いた。結構大きめの騒動があって万事屋が活躍したらしい、と。怪我人が多く出た。死者も、出た。
もちろん銀時は生きてる。買い物中にチョコを選ぶヤツを見かけた。そうやって日々を過ごして、髪が伸びたらまた来るんだろうな。

私の美容室に。





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