小説 | ナノ 天国?


確か季節は夏だった。照りつける日射しと青々とした木々、そして蝉の鳴き声がいやに耳に残っていたけど、ここは桜の花びらが雨のように散っている。風も穏やかだ。

少し歩けば、町並みは木造と鉄筋ビルが混合していて、人々はみな着物を着ているのがすぐに見てとれた。なんだか活気はないけど、人情に溢れてる感じがする。もっと進んだ先では髷を結ったおじさんが車を運転してたいたり、着物の丈が短い女の子たちがケータイいじっていた。

もしかして私浮いてる?物理的じゃなく。
「まぁ、いっか……」



ただぼーっとする頭をキョロキョロさせて、ふらふら歩いて、あれ?と、思った。動物が二足歩行で服を着ている。船が空を飛び、みな着物に身を包み、日本刀を脇に差した男たち。ふざけてるこの世界を知ってることに気づいたのはすぐだった。

漫画やアニメで見たことがある。ちゃらんぽらんな侍が仲間とともに戦って、笑って、泣いて、大切なものを守る話。
「銀魂……」

ななにかが重くのし掛かった気がした。




またフラフラ歩いてたら公園に着いた。よっこいしょとベンチに座り空をあおぐと、たくさんの船が飛んでいる。
本当に銀魂なんだ。唯一、成人してからも読み続けた漫画の世界に、私はいる。なのにどうしてこんなにも気分が重いんだろう。まるで私を受け入れることを拒んでいるような。

急に耐え難い疲労感を感じた、とにかく、人のいないところに行きたいと思った。






それからは、なんとか探した不動産屋に行って、安い部屋はないかと頼み込んで、一軒だけ見つかって、地図をもらってすぐに向かった。ホームレスなんかになりたくなかったし、居候も絶対無理。人間関係なんて、この世界で築ける気がしない。

とにかく、一人になれる場所が必要だと思った。






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