小説 | ナノ 受取れ


朝起きてから、神楽の様子がおかしかった。いや、正確には昨日の夕方からだ。ぜってーなんか隠してやがる。寝ぼけ眼で洗面所に入ったアイツを見てから、デスクの引き出しを開けた。
アレ……あった。期間限定イチゴチョコ。
また勝手に食べられたかと思ったが、どうやら違うようだ。朝食中もヤツの顔色を伺うが「ジロジロ見んじゃねーヨキモいアル!と頬を打たれた。
いつものように卵かけご飯を食べ終わり、アイツは何故か意気揚々と出かけていった。こんな時間に珍しい。
まさか……お、お、「おはようございまーす」

「どうしたんですか銀さん、頭なんか抱えて」
「新八君、お父さんはどうしたら良いんだ!神楽ちゃんに、お、お、男が!」
「何言ってんスか」
新八が冷めた目で俺を見ながら、ズイっと四つ折りにされた紙切れを寄越してきた。それを掴むとすぐに新八は手を離し玄関へと歩いていく。
「じゃあ銀さん、その時間になったらちゃんと戸締まりして来て下さいね」
そう告げて、来たばかりだというのに新八は帰って行った。

渡された紙を広げると
【今夜十八時、恒道館ニテ待テ】と書いてあった。ふと目に入ったカレンダーを見て気づく。
「ったく、面倒くせーことしやがって」


約束の時間。銀時は恒道館の門を叩いた。
「頼もー」
「はーい、あら銀さんいらっしゃい」
妙は微笑みながら、何も知らない素振りで銀時を中へ通す。道場へと続く廊下を進み鼻をほじりながら銀時が口を開いた。
「なあ、コレってサプライズなの?俺気づいてんだけど、バリバリ予想ついてんだけど、驚く振りでもした方がいーわけ?」
「銀さんが気づくことなんて私達も予想してましたよ。だから、ただ喜んでくれれば良いんです、新ちゃん達は」
「……あっそ」
すぐに道場の扉の前に着いた。さぁどうぞとお妙に促され、扉を開ける。
ーーーパンパン!パン!
「誕生日おめでとう!銀ちゃん!」
「銀さん、おめでとうございます」

てっきり、新八と神楽だけだと思ってた。
道場内は装飾され、沢山の料理が連なっていた。それを囲むのは、いつものヤツら。
「何やってるんだい銀時、早く座りな。主役が来ないと始めらんないよ」
「……ああ、」


それからは、どんちゃん騒ぎだった。飲んで食って脱いで、殴って蹴って殴られて。何故か居るゴリラはお妙にボコボコにされ、ストーカーメガネは酔って庭で寝ている。
そんな殺伐とした中、神楽が装飾された箱を持ってこちらにやって来た。
「銀ちゃん、これ」
「あ?んだよ」
適当に箱を開けて中身を見るとホールのショートケーキが入っていた。まじまじと見ていると、神楽が「花子の家で一緒に作ったアル!」そう言った。
「エエェエ!!」
アイツの家で?あの花子と?想像出来ねえ。つーかいつから仲良くなったんだよ。銀時は未だ信じられない気持ちを抱きながらもケーキを取り出した。

……なるほど。
‘誕生日おめでとう!銀ちゃん!’
板チョコのメッセージは、神楽の字ではなかった。
「花子も誘ったけど、明日早いからって断られたアル」
「……だろーな」
無駄に達筆なその文字を見ながら、その言葉に少し笑った。


「ウマいアルか?」
「ああ、上出来上出来」





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