こんにちは
ハッとして瞼を開いた。真っ直ぐに伸びる道の上で、ただ前を見据えた。
あれ、さっきまで家に居なかっただろうか。ああ、そういえば
死んだんだっけ
「う、うわーん!っ、母ちゃーん!痛いよー!」
後方から子供の泣き声がした。その声で一気に現実感が押し寄せる。振り向き下を見ると、転んだらしい少年の右膝からはちょっとばかし血が出ていて、私は少年に近づき大丈夫かと声をかけた。
「うえーん!いだいよー!」
「どこが痛いの?見せて?」
「いたい、いたいー!、母ちゃーん!!」
「大丈夫だから、ほら」
「いだあああーい!うわーん!!母ちゃんんんんんあああああ!!」
泣き叫ぶ少年は全く収集がつかなくなってしまって、なんだか急に苛だちが募った。たかがかすり傷じゃないか。出血だって大したことない。その程度で……
町中が静寂に包まれたような気がした。
自分のうるさいと言う叫びが聞こえて、息を切らしてこんな子供になにいってんだと気づいた時には少年は泣き止み、きょとんとした目を向けられた。
「あ、いや……ごめん。ほら、足見せて手当てしてあげるから」
純粋に向けられる少年の眼差しは無視し、患部を確認する。思ったとおり大したこと無さそうだ。綺麗に洗い流せば大丈夫だろうと、ちょっとだけ傷口に触れた。
「わぁ!!ねーちゃんすごいや!魔法使いなの?すごい、ぜんぜんいたくないや!」
興奮した少年の声。それと同時にヒリヒリし始める、右膝。
その間に母親らしき人が来て、ありがとうございました、このバカ息子、いつもすぐに居なくなっちゃって。と言って、お辞儀して、少年がバイバイと手を振るから振り返して、背中を見送った。遠くで「すごいんだよあのおねーちゃん!ボクのけがに触っただけで治したの!魔法みたいだったよ」って聞こえた。母親のなに言ってるのこの子はって顔が優しくて。
なんで、膝、痛いんだろう。