※黒執事パロ
( ムラクとヒカル )
時刻は午後の三時。
そろそろ甘いものが欲しくなってくる時間。
ヒカルは甘いものが欲しいなと思いつつ自室に籠りムラクとリクヤとカイトが集めた怪事件に関する情報資料に目を通していた。
こんこんと鳴り響くノック音にヒカルはきたかと言わんばかりに口角を上げる。
「入れ」
資料から目線を変えないまま言うと扉の向こうから失礼しますと言う低めの声色が聞こえる。
「坊ちゃん、ティータイムになりましたのでスイーツをお持ちしました」
言うとムラクは本日のスイーツはフォンダンショコラですとヒカルの目の前にフォンダンショコラをおいた。
「いただきます」
律儀に手をあわせるヒカルにムラクは笑みを浮かべる。
日本人の礼儀作法は悪魔であるムラクからしてもしなやかに美しくうつった。
ヒカルはフォークとナイフでフォンダンショコラを食べやすい大きさに切ってはぱくりと食べ、再び切っては食べを繰り返す。
気がつけば盛り付けられたらクリームやチョコレートは愚かフォンダンショコラ本体もほとんどが器からなくなっていた。
ムラクはからっぽになっていく器に微笑むとお味は如何ですか?とヒカルに尋ねる。
それに対してヒカルはあーだのうーだの言いつつ最後のひとかけらにフォークをさす。
そしてそれをムラクの口元まで運んだ。
「こんな味だ」
そう答えるとヒカルはつんっとそっぽを向いた。
ムラクは一瞬、目を大きく開くもすぐに表情を戻し、そして微笑んだ。
「悪くはありませんが、まだまだですね。カイトにはもっと腕を上げていただかなければならないようですね」
微笑みを崩さないまま、しかし、明らかに落胆したような声色を発するムラクにヒカルはうつむき眉を下げた。
「…、ぼ、ぼくは美味しいと思ったけどな、…」
「ほんとうですか?それはよかった」
先ほどとうって変わる声色のムラクにヒカルはやられたと思い下げていた眉を歪ませる。
「きみ、ぼくに感想を言わせたくてわざと、…」
「なんのことでしょう?」
と首を傾げるや否や、ああ、そろそろ、失礼しますねと続けてふつふつと怒りを露わにするヒカルを華麗にあしらったムラクは部屋の出入り口まで歩む。
「あぁ、それから、…ご馳走さまでした。坊ちゃんのデレ、堪能させていただきましたよ」
そう言い笑みを浮かべつつムラクはヒカルの部屋をあとにした。
怒りと羞恥で真っ赤になりながら口をぱくぱく動かすヒカルを思い浮かべながら。
( あぁ、なんと可愛らしいのだろうか。愛しの我が主は )