※夢主はデフォ名です。
※二人が結婚して少しした頃




 リーブス商会経由で良い光石が手に入った。でも私の執務室にはもう丁度良いものがあるし、アルミンにも支給したばかりだ。
 じゃあリーベにあげよう、と思ってリヴァイに声をかけると、

「いらねえ」

 即答だった。

「え、いらないの?」
「手元に明かりがあると、あいつが兵舎でも仕事を持ち込むようになるだろうが」

 リーベを慮ってのことだったのか。なるほど。私も配慮が足りなかったな。確かにあの子を働かせ過ぎている。気をつけないと。

 そこでノックの音がした。

「お疲れ様です」

 おっとここで本人登場。長く伸びた髪は綺麗に結い上げていて隙がない。ほとんど毎日会っているのにいつの間にか大人びているから感慨深くなってしまう。

「わ、この光石いいですね」

 リーベは目を輝かせる。羨ましげな眼差しだった。

「あー、実は君たちの部屋用にどうかと思ったんだけど、リヴァイに断られちゃってさ」

 ぐるん、とリーベがリヴァイを仰ぐ。

 この子は光石が欲しいんだな、とその動きでわかった。

「いただいてはいけませんか? これがあれば兵舎でも業務が出来るように――」
「兵舎は仕事をする場所じゃねえ」
「お邪魔にならないようにします」

 それに、とリーベが訴え続ける。

「部屋が明るくなりますよ?」

 リーベのおねだりとか珍しいし、これはリヴァイが折れるかな。そう思った。

 するとリヴァイは目を眇めた。

「……リーベ。お前、いいのか」
「え?」
「明るいと、いつも嫌がるだろうが」
「…………え?」

 リーベが何度か瞬きをして――それから一気に顔が赤くなった。

「な、あ、あの……そ、そ、それは……!」
「何だ」
「ずっと、その、明るくするわけじゃないでしょう……!」

 可哀想なくらいどんどん赤くなるリーベにリヴァイが畳み掛ける。

「これが手元に来るなら俺はずっと明るくする」
「え、ええええええ……そ、そんな……おかしいです、だって、だって……!」

 赤くなって、青くなって、リーベは光石とリヴァイを交互に見る。

「……冗談ですよね?」
「俺は本気だ」

 リーベはうなだれる。見ていて気の毒なくらいに。何だか一気に十代の頃の小さなリーベに戻った気がした。いや、今もこの子小さいけれども。

「辞退します……別の方へ譲るか、大部屋で使ってください……」

 とぼとぼと部屋を出て、扉が閉められた。

「……いくら可愛いお嫁さんだからって意地悪してたら愛想尽かされるよ?」

 指摘しても、リヴァイはどこ吹く風といった様子だった。
 私は書類を仕分けながら、

「正直に言えば?」
「何をだ」
「兵舎にいる時は仕事じゃなくて俺を見てくれって」
「…………」

 リヴァイは表情を変えることなく、ただ紅茶へ口を付けるだけだった。


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