Novel
【幕間】2000年後のあなたへ-857-【上】

 どうしてわたしのなまえをしっているの。

「だって、すべて知っているから」

 おんなはさっきとおなじことをいった。

 どうしたら、そんなふうになれるの。

 わたしは、しりたい。

 どうすればいいか、しりたい。

 だって、くるしい。

 わたしはじゆうになりたい。

 ぶたをじゆうにするほうほうしか、わからなかった。

 わたしはどうすればいいの?

「――じゃあ、私を殺してみる? そうすれば知りたいことは全部わかるから」

 わからない。

 なにをいっているのか、わからない。

「神が私の血に呪いを施したの。私を殺す者は私の持つ全知の力を得られると。神ってば全能だけど全知ではないから、それで私の力を手に入れようとしたのよね。なのに結局私を殺さずに、この世界からいなくなっちゃって……まあ、神に道理を求めても詮無いことね。とりあえずあなたの背中にいるを手に入れたら私にかけられた呪いは解ける。……だけど、まあいいわ。物事が思い通りになることなんてこの世界では稀だから」

 わたされたのは、ちいさなつるぎだった。

 さわりたくなくて、すぐにてをはなしたら、つるきがおんなのてにおちた。ちがでた。どうしよう。そんなことしたくなかったのに。

「……この程度では、かなり限定的な力にしかならないわ。欲がないのね」

 なんだろう。
 ぐらぐらする。
 あたまのおくが、へん。

「さて、これからどうしましょうか。……ああ、伝言をお願いした方が良さそうね。いつかあなたと会えるあの子へ伝えて欲しいことがあるの」

 あのこって、だれ?

「会えばわかるわ。遠い未来の私の娘よ」

 むすめ?

「――『2000年後のあなたへ』」


(2022/12/07)
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