Novel
座標への道
私の撃った弾丸が、エレン・イェーガーの首を刎ねた。
「くっ!」
コルトが持っていた対巨人用ライフル、反動が強い。強すぎる。私の身体は後ろへ吹っ飛ばされる。
まずい。頭、庇わないと。ここで気絶すると、動けなくなると、確実に死ぬ。
「ガビ、気をつけて」
女の声がした。この声、知ってる。でも、誰だっけ。
とにかくその女のおかげで、私の頭が地面に叩き付けられることはなかった。首の後ろを強く支えられて事なきを得る。
奇妙な装置――立体機動装置を装備している姿を見るに、女はパラディ島の兵士のようだった。顔を見ると見覚えがあるような、ないような。
そしてそいつは私から離れると同時に、一直線に立体機動装置で飛んだ。弧を描いて落下しつつあるエレン・イェーガーの首に向かって。今まで見た兵士の中で一番の速度で飛んで行く。
途中、上から降ってきた瓦礫を避けた拍子にまとめていた髪が解けて、長いそれがばさりと広がる。
見覚えが、ある。
レベリオの港で長い髪をなびかせて立っていた姿が重なる。
あれは――
「ミイラ女?」
そうだ、さっきの声はあいつの声だった。包帯を巻いた顔しか知らなかったから、それを外されるとわからなかった。怪我、治ったってこと?
でも、何であいつがここに?
それに、お腹が膨らんでない。赤ちゃん、もう産まれたの?
何であいつが立体機動装置を使いこなせるの?
何もかも、私にはわからない。
そしてついに、エレン・イェーガーの頭が地面へ落ちる。
ジークが腕を伸ばして受け止めたと同時に――ミイラ女の手も、エレン・イェーガーの頭へ触れていた。
「エレン、私も連れて行って」
そして、あいつが叫んだ。
「座標へ!」
次の瞬間、落雷を思わせる光の柱が天と地を結んだ。
(2022/02/27)