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▼ 恋心をお届けします

「サリバン様ってお孫さんがおられたんですか!」

 最近、サリバン邸からの食材注文量が増えた。数日に一度の少量が、毎日大量に。
 パーティーでも開かれるのかと思っていたらしばらく経っても注文量はそのまま変わらなかった。不思議に思ってオペラさんに訊ねると、サリバン様のお孫さんがよく食べる方なのでと教えてくれた。

 へえ、と思ってから、驚いた。

 だってサリバン様、そもそもお子様いたっけ?

 まあ、私みたいな超庶民悪魔が知ることのない情報は山ほどあるだろうし気にしないけれど。

 とりあえず、今日も山となっている食材を使い魔で運び終えて注文と齟齬がないか確認してもらいながらオペラさんと会話を続ける。

「これだけの量をオペラさんだけで作るのは大変ですね」
「作り甲斐がありますよ」
「オペラさんの料理は何もかも美味しいですから、お孫さんが羨ましいです」

 次期魔王候補、三傑であるサリバン様の側近をたった一人で勤め上げるオペラさんは武力、知力はもちろん広大なお屋敷の管理能力まで秀でた超万能型悪魔で、料理の腕も最高級なんだから。

 そこでオペラさんが私に向き合う。

「商品すべて確認しました。今日も配達ありがとうございました」
「ではこちらに受取サインを。ペンをどうぞ」

 オペラさんは尻尾でペンを受け取って、さらさらとサインを済ませた。いつ見ても器用な尻尾だと思う。私はそこまでできないなあ。全然鍛えてないし。

 今日もご注文ありがとうございましたと挨拶をして帰ろうとしたら、ペンを返したオペラさんの尻尾が私の指先にするりと絡んだ。

「入間様には感謝しています」

 イルマ、がお孫さんの名前らしい。それより何だろう、この尻尾。ほわほわして、さらさらで、優しいのに力強い感覚にどきどきしてしまう。

「料理を『美味しい』とたくさん食べてくださることや、これまで考えられなかった日常を作ってくださったこと。あと――」

 じっと、オペラさんの綺麗な色の瞳がまっすぐに向けられた。

「あなたと、こうして会える機会を増やしてくださったこと」

 顔が熱くなるのがわかる。羽を広げて飛んで逃げたいくらいに。でも、指先に絡んだ尻尾から逃げられなくて。

 どうすればいいかわからない。
 だから、

「わ……わたしも……そう思い、ます……」

 素直に自分の気持ちを伝えることしかできなかった。


(2020/06/28)


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