害がなさそうってよく言われる
「じゃじゃーん! 今日の座学試験、見事満点!」
一日の訓練と講義が終わるなり、わたしはマルコのいる席へ走って向かった。返却されたばかりの試験結果を手に持って。
「本当だ、すごいね」
「すごいのはマルコだよ! わかりやすく教えてくれたからこんなに出来たし!」
こんな点数は見たことないから、わたしは本当に嬉しかった。
浮かれているとマルコも自分の答案を見せてくれた。そこに書かれた数字にわたしは首を捻る。
「99点? あれ? マルコが何で?」
「問題を深く考えすぎたみたいだ。もっとシンプルに考えれば良かったんだね」
マルコは苦笑してから答案用紙を丁寧に畳んだ。
「なるほど、つまりわたしみたいに単純に考えるべきだったってことか」
話しながらわたしは空いている隣の席へ腰を下ろした。
するとマルコは困ったような表情になって、
「ちょっと近くない?」
「え? わたしはそう思わないけど」
「もう少し離れた方が良いんじゃないかな」
「あ、もしかして近いと嫌なの?」
するとマルコは首を振って、
「嫌じゃないよ。でも、君は女の子で僕は男だ」
わたしは首を傾げた。
「でも、マルコだし」
「……害がなさそうってよく言われる」
「うん、その通りのイメージかな。嫌?」
「うーん……」
少し考えるような顔つきになってから、
「そういうわけじゃないけれど――たまには僕も頑張ってみようかな、とは思う」
マルコがわたしの顔を覗き込んだ。とても近い距離だ。
「気になる女の子が、少しは僕を意識してくれるように」