140000企画 | ナノ


害がなさそうってよく言われる

「じゃじゃーん! 今日の座学試験、見事満点!」

 一日の訓練と講義が終わるなり、わたしはマルコのいる席へ走って向かった。返却されたばかりの試験結果を手に持って。

「本当だ、すごいね」
「すごいのはマルコだよ! わかりやすく教えてくれたからこんなに出来たし!」

 こんな点数は見たことないから、わたしは本当に嬉しかった。

 浮かれているとマルコも自分の答案を見せてくれた。そこに書かれた数字にわたしは首を捻る。

「99点? あれ? マルコが何で?」
「問題を深く考えすぎたみたいだ。もっとシンプルに考えれば良かったんだね」

 マルコは苦笑してから答案用紙を丁寧に畳んだ。

「なるほど、つまりわたしみたいに単純に考えるべきだったってことか」

 話しながらわたしは空いている隣の席へ腰を下ろした。
 するとマルコは困ったような表情になって、

「ちょっと近くない?」
「え? わたしはそう思わないけど」
「もう少し離れた方が良いんじゃないかな」
「あ、もしかして近いと嫌なの?」

 するとマルコは首を振って、

「嫌じゃないよ。でも、君は女の子で僕は男だ」

 わたしは首を傾げた。

「でも、マルコだし」
「……害がなさそうってよく言われる」
「うん、その通りのイメージかな。嫌?」
「うーん……」

 少し考えるような顔つきになってから、

「そういうわけじゃないけれど――たまには僕も頑張ってみようかな、とは思う」

 マルコがわたしの顔を覗き込んだ。とても近い距離だ。

「気になる女の子が、少しは僕を意識してくれるように」

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