140000企画 | ナノ


俺はお前を……って言えるか馬鹿

「すっげえ可愛い。抱きしめたい。嫌か? せめて手を握らせてくれ。指先だけでも充分だから」
「あー……」

 私はジャンから目を逸らし、隣にいる男の子に助けを求める。

「どうしようアルミン。こんなに強力な惚れ薬が出来るなんて思わなかったよ」
「君、最近やけに本を読んでサシャとコニーに薬草を教えてもらっていると思えばこんなことをしていたんだね……」

 呆れ顔のアルミンは頬を上気させたジャンを見てため息をつく。

 ちなみにここは倉庫で、私たち三人しかいない。

 アルミンは私の見せた本へ視線を落とした。

「『一口飲むだけ一途な人ほど効果は絶大惚れ薬』か……効果はどれくらい続くの?」
「個人差があるみたいだからわからないの。長くても半日らしいんだけど……」

 私が頭を抱えていると、ジャンが目の前にひざまずく。

「好きだ。お前しか見えない。俺が憲兵になったら内地で一緒に暮らそう」

 今更ながら一途な人の愛をねじ曲げるなんて良心が痛む。

「お前が許してくれるなら俺の家族も呼びたいんだが」

 日頃はお母さんの悪口ばかりなのに、ちゃんと親孝行を考える良い息子すぎて本当につらい。

「助けてアルミン!」
「僕もどうすればいいかわからないよ……そもそもどうしてこんなことをしたの?」
「そういえば……何でだろ?」
「誰かに飲ませるための実験台?」
「うーん……それは、違う、ような……」

 私が首を傾げている間にもジャンの求愛は続く。

「たとえ超大型巨人が現れてもお前だけは守ってみせる。この命に代えてもだ。俺はお前を……って言えるか馬鹿」
「だよね、今『愛してる』とか言われても嬉しくないよ」

 ん?

「ジャン、もしかして戻った?」

 アルミンが青い瞳を大きくしてジャンの顔を覗き込む。

「あ? 何言ってやがる、そもそも何で俺はお前らとこんな倉庫にいるんだ? 口の中がやたら苦い――って、おおい!?」
「良かったー! いつものジャンだ!」

 ほっとして私が思わず飛びつくと、ジャンは慌てたような声を上げて、

「な、何してやがる! そんな引っ付くんじゃねえ!」

 真っ赤になったジャンの顔を見て、ああそうかと私はようやく気づく。

「ねえアルミン、私が惚れ薬を作った理由がわかったよ」
「そう? じゃあどうして?」

 私は答えた。

「私、ジャンが好きみたい。だからジャンにも私を好きになって欲しかったんだと思う」

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