たまには好きって言って
最近ベルトルトの様子がおかしい。
「倦怠期、かなあ……」
付き合い始めてまだ一ヶ月なんだけど。
好きって毎日たくさん伝えて、ほとんど私が押し切るみたいな形で男女交際なるものを始めたけれどこの調子だ。恋人らしい甘やかさなんて皆無に等しい。付き合う前の方がまだマシだったくらい。
「むう……」
由々しき事態だと思う。
唸っていると遠くに見つけた彼の背中。一人で歩いている。
「ベールトールトー!」
勢いまかせに私は駆け出した。
そして追いつく直前にスライディングでそのまま後ろから足払いをかけて、大好きな人を押し倒す。体格差があっても勢いと力を利用すれば難なく出来る。
「ちょっと話があるんだけど!」
「……何」
仰向けになったままベルトルトが言った。不意打ちでも受け身を取るとはさすがだ。
私は深呼吸をしてから、
「私のこと嫌いになっちゃった? もう私と一緒にいたくない?」
「……違う、けれど」
「でも一緒にいてくれないし、目も合わせてくれなくなったよね?」
「それは――」
ベルトルトが目を逸らす。
「最近……言われないから……」
「何を?」
「前みたいに『好き』ってあまり言われないから」
その言葉に私はぽかんとして、
「……え? あの、まさかそれが理由? 私に好かれてるって自信とか持ってくれないの?」
「だって僕は……」
言いよどむベルトルトの頬へ手を伸ばし、むにーっと指先で優しく引っ張る。
いつもは届かないのに、こんなことが出来るなんて嬉しい。
「本当はね、毎日言いたいけれど聞き飽きちゃうかなって心配してたの」
「そんなことない」
即答されたことに驚いていると、
「その……せめて、たまには好きって言って?」
少し切なげで、少し照れたような顔つきに私の胸はときめく。嬉しくて頬が緩んだ。
「――うん、わかった」
そして私はベルトルトの首筋にしがみついて耳元へ唇を寄せたのだった。