邪魔してごめん、わざとだけど
「むむー……」
「何唸ってんだ、お前」
「あ、エレン」
外を適当に歩きつつ私が一人で首を捻っていると、対人格闘の自主訓練をしているエレンが声をかけてくれた。
「あのね、最近おかしいんだよ」
話しながら、私は頭の中でカウントダウンを始める。
3
「おかしいって、何が」
エレンが首を傾げる。
2
「例えばこんな時――」
1
「ああ、こんなところにいたんだね二人とも」
金髪の男の子がひょっこりと現れた。
「何だ、アルミンか」
「エレン、ミカサが探してたよ」
「あいつは用がなくても俺を探すよな……」
「訓練所にいたよ。今もまだいるんじゃないかな」
「はあ、仕方ねえから行って来る。じゃあな二人とも」
汗を拭いながらエレンが立ち去って、アルミンと二人で残される。そこで私は今日こそ訊ねることにした。
「アルミン、あのさ」
「邪魔してごめん、わざとだけど」
「……やっぱりそうなんだね」
私はつい大げさにため息をついてみせる。
「どうしてそんなことするの?」
最近、同期の男の子と二人で話していると、アルミンは必ず現れる。そして相手をどこかへ向かわせてしまう。つまり、自然を装いつつ追い払っている。
最初は偶然だろうと思っていたのだけれど、もうそんな言葉では片付けられないくらいの頻度と確率で。
「全員、私に好意を持つでもなく普通に……悲しいくらい普通に接してるだけじゃない。そんなことしなくても――」
「手遅れになるよりは良いんじゃないかな?」
晴れやかな笑顔に頭を抱えたくなる。
「アルミーン、私に果たしてそこまでの魅力があるでしょうか? ないよね? ないと思うよ」
「良いんだよ、君は、そのままで」
と、そこでアルミンが青い瞳を私へまっすぐに向ける。
「それに、今回はちゃんと邪魔した理由があるんだ」
「え?」
「今夜の食事当番は僕たちだから、一緒に食糧庫と食堂へ行こう」
「う、うん」
差し出された手を無意識に握り返してしまったことに、歩き出してから私は気づいた。