自由倉庫 Freiheit ::真夏の夜の肝試しB(王子様シリーズ) ※夢主はデフォ名です。 コニー曰く『出る』らしい。 「訓練中の事故死ってあるだろ? そういったヤツが未練を残してこの森を彷徨ってるってわけだ」 「はあ? そんなもんいるかよ、信じられねえな」 それを笑い飛ばしたのはジャンで、そんな彼にマルコが言った。 「その幽霊が見える人には特定の条件があるらしいよ」 「へえ、どんな」 「それは――」 『恋をしている』こと。それが、幽霊が見える条件だった。 「お前は見えるかもな」 ライナーが少し面白がるように言って、僕が返す言葉を見つけられずにいるうちに出発してしまう。 この肝試し訓練は、一人ずつが時間を置いて森を進むものだから、一緒には行けない。 僕にその幽霊が見えるのかな、とぼんやり進んでいると――いた。 見えてしまった。 大人しそうな女の子で、恐怖を煽るようには見えなかった。 何も知らなければ、普通に同期だと思ってしまいそうだ。 「ねえ」 話しかけられたけれど、無視して先へ進む。 コニーの怪談話によると『言われるがままに従ったら死んでしまうから耳を貸してはならない』らしいから。 また声がした。 「こっちが近道だから、おいでよ」 次に明るくて元気な声がした。 「ほんと? 行く行く!」 息を呑んで、振り返る。 イリスだった。 相手を幽霊だとは微塵も疑っていない、軽快な足取りで進む。 イリスにも、あの子が見えているんだ。 『その幽霊が見える人には特定の条件があるらしいよ』 僕なんかに、恋をしているから。 「っ」 幽霊に誘われるまま崖へ向かって行くイリスが見えて――次の瞬間、僕の身体は勝手に動いた。 ----- 次回完結です。 back ×
|