自由倉庫 Freiheit ::真夏の夜の肝試しA(王子様シリーズ) ユミルに提示された肝試し訓練の説明用紙を見れば、『一人』で向かうこととあった。 「はい!? 一人でこの森の中歩くの!? 男女ペアでしょ、こういうのって普通は!」 「どれだけ俗文化を踏まえても訓練の一環、ってことだな」 そうなると、一秒でも早くゴールして、先にゴールしているであろうベルトルトと一緒に過ごすしかない。 「ベルトルトと一緒に肝試ししたかったぁ……」 そんなわけで、落ち込みながらも頑張って早足で森の夜道を一人で歩く。灯りがあっても歩きづらい。 「結構大変……ゴールどこ……?」 出発の順番はくじ引きだった。ベルトルトはわたしより先に出発していたし今頃ゴールしているだろうなあと思いながら地図を取り出そうとしたら、 「こっちだよ」 声がした方向に顔を向けると、知らない女の子が手招きしていた。 誰だろう? 104期兵も200人以上いるし、全員のことはちゃんと覚えきれてない。 「こっちが近道だから、おいでよ」 「ほんと? 行く行く!」 まあ、この子が誰なのかわからなくても問題ない。助け合いの精神があってこそ、わたしみたいな凡人は日々の訓練をどうにか乗り越えられるんだから。それだけで充分。 わたしはよく知らない女の子が示す方角へ向かう。 とにかく早くゴールしたい。 ベルトルトに会いたい。 その一心で、走る。 「教えてくれて、ありが――」 女の子にお礼を言おうとした瞬間――足元にあった地面が、消えた。 ----- 真夏の夜の肝試しBへ続く。 back ×
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