自由倉庫
Freiheit


::幼心の君へA(翼のサクリファイス原作沿いその後)

※夢主はデフォ名です。


 ん? もうやった? それってどういうこと?

 疑問を口にする前に、リーベが窓の外を見て「あ」と声を上げた。何だろうと思えば、夕焼けの空がそこには広がっていた。

「もう、かえらなきゃ」

 そう言ってリーベが扉に向かう。ちょこまかと可愛らしい足取りで。いやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って、どこ行くの。勝手に兵舎を出て行かれたら困る。凄く困る。
 そこでリヴァイが動く。リーベの歩幅なんてあっという間に追い越して、リーベの前でその目線を合わせるように膝をついた。

「帰らなくていい。リーベ、今日はここにいるんだ」
「……え?」

 きょとんと瞳を大きくしてリーベが首を傾げる。
 それから、困ったような、少し悲しそうな顔つきになった。

「でも……やっぱり、かえる」

 声も弱々しくて、聞いていられない。

「かえる。かえりたい。かえらなきゃ」

 どうしよう。何とかしてあげたいけど、どうすればいいかわからない。
 出来るなら叶えてあげたい。でも、どこへ『帰る』にせよ行かせてあげるわけにはいかないし、そこに今の小さなリーベが求めるものなんてないんだから。
 隣のジャンとアルミンも困りきった表情になっていた。

 泣かれることを覚悟しようとリーベを見ると、

「リーベがいなくなると寂しいから、一緒にいて欲しい」

 そう言って、リヴァイは手を差し出す。

「知らねえヤツばかりが周りにいて、お前が寂しいのはわかる」
「…………」
「それでも、出来るだけ寂しくさせねえようにするから」
「…………」
「お前を悲しませるようなことから守れるように、強くなるから」
「…………」
「だから、俺と一緒にいてくれねえか」
「…………」

 なんとなく隣を見ると、アルミンは女の子みたいに両手で口元を押さえていて、ジャンは顔を赤くしていた。

「これ私たちここにいていいの?」
「しっ、ハンジさん」
「いいところなんですから」

 小声で注意されて黙って視線を戻せば、リーベはリヴァイの手をじっと見ていた。それから窓の外をもう一度見た。

「…………」

 そして、リヴァイの顔を見ながらその手へ小さな手を重ねた。

「……じゃあ、リーベといっしょにいてね?」
「――ああ、約束する」

 リヴァイはリーベの小さな手を引き寄せて、軽々と抱き上げる。

「食いたいものはあるか? 何でもいいぞ」
「んー、りんごたべたい」
「それは食後だな」

 その後ろ姿を見送りながら、ほっと息をつく。

「よ、良かった……泣かれると思った……」
「兵長すげえ……」

 アルミンとジャンも似たような様子だった。

「リーベさんは、兵長の宝物なんですね」

 その言葉に、ふと思う。

「どうしてあんなに好きなんだろうね。そりゃあリーベが良い子だってことは知ってるよ、ずっと昔から」
「言いたいことはわかりますよ。でも、良いんじゃないですか、わからなくて」
「言葉にしようとしても、きっと言い尽くせないんだろうなと思いますし」

 それもそうか、そうだよね、と頷いて、私たちは食堂へ向かうことにした。

-----
続かない。
 

2019.06.09 (Sun) 13:45
長編関連|comment(0)

back

×