自由倉庫
Freiheit


::綺麗になった(翼のサクリファイス原作沿いその後)

 久しぶりにエレンたちと顔を合わせて驚いた。みんな背が伸びて、精悍になって、男の子は髭を伸ばしていたり見違えるようだった。
 それに比べて――
「私、全然変わってない……」
 日々を生き抜くことしか出来ていない。成長を感じられない。私なりに毎日色々やっているはずなのに記憶が曖昧だった。
 落ち込みながらため息をついていると、
「そんなことねえだろ」
 声が降って来た。聞きなれた声に顔を上げると、もちろん兵長だった。
「そうですか? そりゃあ歳は平等に重ねますけれど……」
 じっと兵長を観察する。
 昔から変わらない顔つきと、その瞳の鋭さと。
「兵長は変わりませんね」
「俺も歳は取る」
 まだまっすぐに見つめられて、見つめ返していると、ぼそりと呟く声がした。
「……お前も、変わった」
 どこが変わったんだろう。自覚がない。
 そこでやっと一つ思いついた。
「そういえば、髪が伸びましたね。ここまで伸ばしたのは十二歳の時以来です。訓練兵になるタイミングで切ったので」
「髪以外も、変わった」
 首を傾げていると、するりと頬を撫でられる。指先で、優しく。
 そして兵長が言った。

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絶望も憂いも悲しみもない、ただただ穏やかに時を重ねる二人のその後が書きたい。
でも無理。
なぜなら世界は残酷だから。
 

2019.04.05 (Fri) 00:01
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