京都舞う
桜がひらひら はらひらり
静かな闇に輝けり

「ここの空気も変わってないなぁ懐かしい」

漂う黒蝶
跨ぎし大門

「ただいま、京都。」






+++陰陽師総本山、花開院家

「おい!バカ竜二!!本なんて読んどらんとちょっとは手伝ってや!」

薄暗い倉の中、ゆらと竜二は羽衣狐との戦いでバラバラになった資料の整理におわれていた。
まぁ竜二に至っては先程から何かと読書に励んでいるのだが…

「うるせーぞ、ゆら。お兄ちゃんは受験生なんだよ。黙ってささっと片付けなさい。お仕置きすんぞ」
「んのバカ兄!!ろくに勉強なんとしとらんくせに!」

兄への壮大な罵声も竜二の耳には入ってこない。可愛いい妹がキャンキャン吠えているよいにしか思えないのだ。

「なぁ魔魅流君どこ行っててん?手伝うてもろおやぁ〜」
「残念ながらアイツは朝方からお偉方と一緒に“大事な人”を迎えに行っててな、今はいない」
「え〜」
「そんなに言うなら、式だせばいいだろうが」

本を捲りながらの戯言。それにゆらは呆れ顔でかえす

「兄ちゃんは最強の陰陽師に何やらすつもりや…それに式出すんは疲れんねん!」
「あっそ。どーでもいいがな、早く終わらせろよ。」

明かりが揺れた

「…おい、ゆら。“見つけたぞ”」
「ん?…ああ、うちも今は分かったで。いくら小さい文庫本やからて見つからんわけないやんな?」

僅かに“匂う”妖気
だが竜二にはどこか懐かしい感じがした。

口ぱくで奴良組か?と問うも違うらしい。

心に詰まる違和感を流し、竜二は入り口まで動く

「お兄ちゃん、ちょっと片付けてくるから、ゆらはせこの続きしとけよ」
「走れっ言言」

間髪入れずに唱えられた言霊に途端消えた妖気だが…

やったか?にしては手応えがなかった…

「おい。ゆら、まだ気配はあるk『ただいま、竜二』」

竜二は後ろから抱きしめられた

心臓が脈打ち今にも爆発しそうだ
この声、感触、匂い…そして纏う空気

「兄ちゃん!誰やソイツ!! 兄ちゃんから離れて! 式神破軍!!」
「おっゆらちゃん破軍出せるんだ♪すごいじゃん!花開院は安泰だね」

ソイツは竜二を抱きしめたまま、爽やかな笑みを見せる
竜二は固まったまま動かない

((どうしたんや、兄ちゃん!何で攻撃せんのや、何かの作戦なんか?))

「竜ちゃん、俺の事忘れちゃった?」
「し、知らん!走れっ言言!」

すんでのところでソイツは竜二から離れた

「あぶないなーもう」
「アンタ何もんや?」
だがソイツが逃げた先には破軍と共にゆら

「ゆらちゃん♪可愛くなったね見違えたよ〜」

調子をトントン拍子に変えるソイツに竜二もゆらも手がだせない

「竜ちゃんは…ひどいっ忘れちゃうなんて、お兄ちゃんこまっちんぐ」
「…今更」
「ん?」
「今更何しにきたんだ」

竜二の言葉にソイツは笑顔をみせる
それはそれは楽しそうな…

「何って、竜ちゃんに会いに♪」
「ふざけるな!」

竜二の渾身のグーパン今度はソイツは逃げなかった
頬に直撃する

「痛っー」

そのまま竜二は走り逃げてしまった

「にっ兄ちゃん!?」
唖然とする、ゆら

((兄ちゃんがあないに取り乱すとこ初めてみた。こいつほんま何者なんや?知り合いみたいやけど、うちは知らんで?))

「なぁアンタ、誰なんや?」

暗い倉庫に冷たい風が吹いた
そして、一羽の黒い蝶が彼の回りをひらひらと舞っていた

「久しぶりだね」

いつか見たことがある…

『誰やったけ?会ったことはあるんやけど思い出せんわぁ』

ゆらの気持ちを代弁するかのこどく現れたのは、今までゆらの後ろで控えていた、十三代目

「え〜ひどい君といい竜ちゃんといい俺のことなんだと思ってるのさ」
「嘘やて〜ちゃんと覚えとるに決まっとるやん!“君ら”特有の“嘘”だよ〜哉斗くん」
また知らないのはゆらだけだ

「10年ぶり?」
「君全然呼び出してくれんのやもん寂しかったわ」
「そんなこと言うけどさっよかったじゃん♪こんなに可愛い子に呼び出してもらえるんだから」
「ゆらちゃん覚えとる?…わけないか」

今まで一人聞き専に徹底していたゆらだが…
「ん?やっぱ知り合いなん?全然知らんで?」

さっきまでの緊張感は既にない

「しょうがないよ。俺ら2年しか一緒に居てないしね」
「へ?」
「あんな…こいつ哉斗て言うんやけど…」

代わりに答えたのは秀元だった
彼の指の先の清々しいまでの笑顔の男

「俺…一応、花開院だよ?」

名を 花開院哉斗 という

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