「榛名、俺はお前を連れて逃げたい」

黒い角を2本はやし人間の姿をした男は言った
暗い闇の中にすっぽり入ってしまうようなそんな身なりだ

「威荻…貴方は黒鬼族の長でしょう?逃げだすことは許されない」
対し此方は白銀の長い髪の毛をもった年端もいかぬ美少女

自然と二人は寄り添い会う
月に照らされた影は一つに重なった

「俺は鬼だ。欲しいものは全て手に入れる」
「そんな事をすれば私は貴方を祓わなければならなくなる。貴方を殺したくない」
「俺が負けると?」
「まさか、私一人では無理よ」
「成る程っ陰陽師総出で来るわけか…だが俺はお前が好きだ!榛名、愛している。諦めるにはいかない」
「来てはダメよ。絶対!絶対来ないで…」

そう言い残し彼女はこの場を去った

ここを最後の場所と信じて…




あれから、幾日かたった夜

榛名は一人、縁側に腰を降ろし月を見ていた
直感していたのだ
今日来ると…

「やっぱり来ちゃったの」
「当たり前だろ」

ばかな人

「私は行けない。陰陽師として花開院を継がなければならない。サヨウナラ」

愛しい人

夜の空に鳴り響いたのは、警報を告げる笛の音

とたん集まる何10人のもの陰陽師
対するは孤独な鬼

結果は直ぐに表を見せた

「榛名っ」

彼は途切れる寸前愛しい女を呼んだ
そして彼女もそれに答える

そして威荻は目を見張った

「まさかっお前」
「大好きだよ。いつまでも」

それが最後だった

貴方のお父さんはかっこよかったよ
最後まで私を信じて愛して…嬉しそうだった
鬼の死に顔はその名に相応しくない…満面の至福の笑みに溢れていた

それから、数ヶ月後、榛名は出産を果たした
産まれた子は哉斗…
花開院哉斗と名付けられ、産まれたばかりだというのに陰陽術を操る事ができ、才有るものとして周りからの恩恵をうけ育っていった

だが、それは突然終わりを告げる

周りから与えられるのは冷たい眼差しと劣悪な言葉だけ

まだ5歳にも満たない哉斗には理解できなかった

だがそれも40になる頃には納得が言った
いや、もしかするともっとずっと前からわかっていたのかもしれない。
認めたくなかっただけで…

40という年月を過ぎたにも関わらず見た目は20代のまま成長していないのだ
哉斗は20を境に成長を止めてしまった

理由はたった一つ

妖怪の子

「母さん、父さんは、俺の父親は誰だ?」

たった17しか変わらないはずの母親はもう若くはない

「此だけは忘れないで。威荻は…貴方の父親はここにいる誰よりも素晴らしい人だったと」
「…妖怪なのか?」
「黒鬼族の長だったわ」

今まで…5歳から今まで、自分が苦しめられたのは母親のせいだ
ずっとそうおもっていた
原因を明確にした今母親と父親が憎い?
まさかその反対の気持ちが今はあった嬉しい。
母親は無理矢理妖怪に迫られたのか、自分は望まれた子ではないのか、
実は違ったのだ

母親と父親は愛し合っていた
ただ境遇が恵まれなかっただけ
俺は望まれて産まれたのだ

「ありがとう、母さん」

たとえ俺が妖怪との子共であっても、母さんの愛は偽りでは無かった
父親は愛してくれたといってくれた
それだけで充分だ

俺は世代を超え生きた
普通の妖怪よりも鬼は更に長生きする
それは例えハーフだとしても…

色んな者を見てきたし花開院の移り変わりも当然目の当たりにした
蔑まされ酷い扱いを受ける事もあったが子供の頃のようには思わなかった

俺は陰陽師だ
妖怪は退治してきた
だが妖怪が妖怪を…という矛盾にときたま苦しんだ

その頃だ
竜二に出会ったのは

「かっこつけんなよ。そうやってアンタは自分自身から逃げてんだ」

まだ5歳にも満たない子供にそう言われた

「じゃあどうすればいい?」
「受け入れろ。妖怪だからなんだ?陰陽師は陰陽師だろうが。もしくは辞めてしまえ。そうすれば楽だぞ?」
「簡単に言ってくれるね」
「簡単な事だろうが。その手に持つ札を捨てこの敷居を跨げばいいそうすれば晴れて自由だぞ?」
「…子供らしくないって言われない?」
「知るかっこれが俺だ」
「俺…か」
「道が一つと誰が決めた?いいじゃないか。妖怪が陰陽師になったって」

俺は竜二に救われた
永い時を生きたにも関わらずそんなことも気付けなかった

それからは竜二と共に過ごした
良く竜二をお膝にのせて難しい本を一緒に読んだりご飯を食べたり
時折魅せる竜二の幼い笑みに心を洗われたり
だから決めたのだ

俺は竜二と共に生き共に死ぬと

その為にはまず、この妖怪の血をどうかしなければならない

共に成長するには邪魔になる

ある書籍でそれを見つけた

分霊箱

本のそれは命をわけ殺されないように…といいものだったが、これを応用すれば?

それから竜二の元を離れた

成し得る為の修行…
竜二と共に死ぬために…


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