Clap


長編ヒロイン設定




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例えばもしもシリーズその2
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〜例えばもしも、麦わらさんチにトリップしてたら。〜




「お?やんのかコラ。変な眉毛しやがって。こんの料理人もどきのチャラ男が。」
「ア″ァ?なんだてめェ、この時代遅れのクソリーゼントが。」

一触即発、とはこういうことを言うんだろうな、と。

少し離れたところからその光景を眺めていれば、
「ちょっとサンジくんいい加減にしなさいよ!」と
隣に立っていたナミちゃんから呆れたような声が上がる。
途端にいままでリーゼントの大柄の男の人と睨み合っていたハズのサンジくんは、
身体を竜巻に変えて「アーイ ナミすゎん!」と良いお返事をしてナミちゃんの目の前へと舞い戻ってきた。

「そそそうだぞサンジ!相手はあの白ひげ海賊団のクルー、しししか、しかも、た、隊長だぞ!!気をつけろ!」
「…ウソップくん、なにもそんなに遠くから…。」
「うるへー!!大体お前、おれより数段弱ェクセになんなんだその余裕!!」
「うーん…、マルコさんから色んなお話聞いてたからかな?」
「おま…バカヤロー!!名前読んでソイツまで現れたらどうすんだコノヤロー!!!」
「え、あ、うん、ごめんなさい。あ、でもわたしそのひとに会いたいんだよねぇ。」

メリーのメインマストの陰に隠れるウソップくんとの会話もそこそこに、
隣で繰り広げられる会話に意識を移す。

「まったく、これからお世話になるかもしれないのに頼み辛くなるじゃないの!」
「でもナミさん、おれァあんな無礼なリーゼントに彼女を任せるのは反対だぜ!」
「は、馬鹿か。まだその女を引き取ってくれんのかどうかわからねェだろうが。」
「ア?!てめェこのマリモマン!”その女”とは何事だコラ!」
「アァ?てめェ、やんのかこの面白ダーツ眉毛が!」
「あ、カッチーン!てめェちょっと面貸せや。」
「上等だコラ。」
「や、ゾロくんの言うことにも一理あるわけだし、サンジくんとりあえずちょっと落ち着いて。」

額を突き合わせたままどこかに向かう二人にそう声を掛ければ、
やっぱりハリケーンと化したサンジくんが、今度はわたしの前に戻ってきた。

ゾロくんはどこか不完全燃焼みたいな顔をしていて
なんだかちょっと申し訳なくもおもったけど、
この二人が喧嘩し始めるとえらいことになるからなぁ。

サンジくんに両手を取られながら恐らく話に聞いていた
サッチさん、だとおもわれる、立派すぎるリーゼントのおっさんを見る。
すると、サッチさんの隣にはキラッキラと目を輝かせるルフィくんと
不思議そうに首を傾げるチョッパーくんが立っていた。

「おっさん!その頭イカスなー!!」
「お!小僧、リーゼントの良さがわかるのか!」
「ルフィ、この頭イカスのか?フランスパンみてえだぞ?」
「なんだとこの狸!リーゼントは選ばれし男にしかできねェ特別な髪型だぞ!!」
「えーーー!!!ほんとか?!!すげー!!って、おれはトナカイだコノヤロー!!」

ルフィくんは相変わらずの自由っぷりだし、チョッパーくんはとんでもなく癒し系だなぁ。

あの、でもあれだよ、わたしもサッチさんとお話してきてもいいかな?
この世界に存在するらしい"マルコさん"が、
わたしの知ってる"マルコさん"と同じ人なのかを確かめたいんだ。
ここまで送ってもらったうえに我が儘言ってごめんなさい。

苦笑混じりにそう言って眉を寄せれば、目をハート型にしたサンジくんが
サッチさんにじゃれつくルフィくんとチョッパーくんを、文字通り蹴散らして。
あああ、なにもそこまでしてくれなくても…!と言おうとしたら
ナミちゃんがわたしの肩にぽんと手を置いて、「あんた、サンジくんの扱い方がわかってきたじゃない」と笑う。
いやいや待って、そんなつもりじゃ…って、それにしてもナミちゃん可愛いな。
や、違った、いまはそんなこと考えてる場合じゃ無かった。

ようやっと話すチャンスが巡ってきたサッチさんの前に走り寄って、あの、と声を掛ける。

(…あ、しまった。)

ここまで来ることに必死すぎて、いざ会えたときになんて声を掛けようかとか考えてなかった。

─── どうもはじめまして、異世界の者ですが。

…いやいや、怪しすぎる。

─── こんにちは!お宅のマルコさんと知り合いかもしれない者です!

…胡散臭すぎて速攻帰られそう。

─── あの、お宅のマルコさんて方、ひと月ほど行方不明になったりしませんでした?

…いきなりすぎるよね。

サッチさんの顔を見つめたまま動きが止まってしまったわたしに、サッチさんが、ん?と優しく首を傾げてくれる。

「先刻マルコの名前が聞こえてきた気がしたんだけど、」

もしかしてお嬢さん、マルコに会いてェの?

適当におちゃらけてみせてるが、あれで結構視野の広ェ男だよい、と言う
いつかのマルコさんの言葉を思い出して、ああきっとこのサッチさんは
あのマルコさんの言っていたサッチさんと同一人物なのだろうと、
確信めいたものが湧き上がって何故だか少し鼻の奥がツンとした。

「あ、の、サッチ、さん?」
「お。おれの名前知ってくれてんの?光栄だなァ。」
「えと、あなた達がこの島に来るらしいって、新聞で見て…。あの、」

マルコさんに、会わせてもらえますか…?

やけに煩い心臓を押さえながら、随分上にある顔を見上げてそう尋ねれば、
「もしかして、アイツの居なかったひと月に関係ある?」と耳打ちされて。

シャツを握る手に、瞳に、力が入る。

多分、と頷いて返事を返せば、そっかァ、と眉を下げて安心したように笑う目の前のひと。
体格やら見た目にそぐわない朗らかな笑顔になんだかほっとした。

「そっかそっか、是非ともアイツに会ってやってよ!」
「ッ、ありがとうございます…!!」
「しっかしお嬢さんみたいな若いコに追っかけさせるなんて、アイツもなかなかのスケコマシ野郎だなァ!」
「は?すけ…、や、違っ!そんなんじゃないですよ?!」

「いやいや、隠さなくてもいーって!いやー、あのマルコがなー!」
「いやいやいや、だから違…、うわ!」

いいからいいから、と手慣れた様子で腰に腕を回される。
と同時に、どこからか酒瓶と、回転しながら燃えたぎるサンジくんの蹴りが飛んできた。

「てめェクソリーゼント!!うちのお姫様の腰を気安く抱いてんじゃねェぞ!!!」
「てめェこの万年発情リーゼント!!仕事サボってナンパとはいい度胸だよい!!!」
「言っとくがてめェら、リーゼントは悪口じゃねェからな!!」

待って、ねえこれどこから突っ込むべきなの?
おれだってまだ抱いた事ねェのに!(え、そこなの?)と鬼の形相で怒るサンジくんの背に庇われるように立ちながら、
怒鳴り声の中に特徴的な語尾が混じっていたことに、少し遅れて気付く。

「あァ、アンタ、うちの馬鹿が迷惑掛けて悪かっ…、!」

これでもかってくらい目を見開いたマルコさんが小さな声でわたしの名前を呟いて、
ああ本当にあのマルコさんなんだと涙が出そうになった。

「マルコ、さん…?」

酷く揺れる声で名前を呼んで、ふらりとマルコさんに向かって歩みを進めれば、
駆け寄って来たマルコさんに抱きしめられる。
…寸前、ひったくられるようにしてサンジくんの腕の中に納まった。あれ?
きょとりと幾度か瞬きをしたあと、サンジくん?と首を傾げれば、
何故か瞳にいっぱい涙を貯めたサンジくんがこちらを見ていて。

「…あの、サンジくん?どうし、」
「嘘だと言ってくれ…ッ!!!」
「は?」
「まさかうちのお姫様の探してた男がこんなハゲジジイだなんて!!」
「オイ、ちょっと待てクソガキ、よく見ろい。ハゲちゃいねェだろうがよい。」
「しかも語尾までオカシイときた!キミならもっといい男がいるよ目を醒まして…!!」
「いやあの、サンジくんちょっと落ち着いて?まずわたしとマルコさんはそういうんじゃないしね、」

わたしとマルコさんの間に立ちはだかるサンジくんに
とりあえず突っ込みたいことが山とあるのだけど、聞いてくれる様子はない。
困ったなぁと首の後ろを掻けば、重たい音がしてサンジくんの頭になにか棒のようなものがクリティカルヒットした。
間髪入れずにナミちゃんが「邪魔したわね、ごゆっくり!」とサンジくんを引きずっていく。
いつもおもうけど…バイオレンスだなぁ…。
ていうかマルコさん、冷静な顔で気を失ってるサンジくんを見下ろして
「気の利く女だよい」は反応がおかしいとおもいます。

「…アレはこの世界でのお前さんの男かい?」
「は…?あの、マルコさん顔怖いんですけど。」
「質問の答えになってねェだろい。」
「いひゃいいひゃいいひゃいいい!!!」

ああなんか久しぶりだわこのやりとり、って言ってる場合じゃないくらい痛いんですが!!
ゆるむ気配のない力に変な発音になりながらも、違います!と主張すれば、
最後にうりうりと頬をひっぱり回してからやっとマルコさんの手が離れていった。

「ううう、痛いぃ…!もうっ、マルコさんちっとも変わってませんね!」
「そっちこそ、相変わらずだよい。…ところでお前さん、なんでここに?」
「え、と、マルコさんに会いたくて、ルフィくん達に送ってもらったんです。」
「…もっと広い意味で聞いたつもりだったんだが…まァいい。」
「?」

なんだか少し怒ったような顔をしたマルコさんにくしゃくしゃと頭を撫でられる。
マルコさんの顔も見えなくなるくらい頭をぼっさぼさにされたあと、次第に髪を梳くように変わっていく手の動きが
暖かくて、懐かしくて、心地よさにに目を閉じると、大きな手がそっと離れていった。

「…ルフィ…あァ、どっかで見たことがあると思ったら、エースの弟かい。」

エース、って、マルコさんの話によく出てきた、食料庫を漁る彼、だよね?
…ああ、道理で。ルフィくんもよくそれで怒られてるもんなぁ。
兄弟ってやっぱり似るんだなぁ。

「あれ、マルコさん?」

マルコさんの言葉に誘導されるようにルフィくんに向けていた視線をマルコさんが居たはずの場所へと戻すと、そこには誰もいなくて。
あれ、わたしマルコさんに会えた気がしてたんだけど、あれ?
きょろきょろと辺りに視線を巡らせると、いつの間にかルフィくんと向かい合ってなにやら話しているパイナップ……マルコさんの後ろ頭が見えた。
…ああ、そういえば海賊は瞬間移動できるんでしたっけね。久しぶりすぎて忘れてましたよハハハ。

「おい、エースの弟。」
「お?エースのこと知ってんのか?つーかオッサン、おんもしれえ頭してんなー!それ地毛か?」
「…不愉快な発言には今回だけ目ェ瞑ってやるよい。」
「語尾もおもしれェ!」

あっはっはっは!と豪快に笑うルフィくんに重たい音の拳骨をひとつ落として、更にその両頬を片手で掴み、「人の話は真面目に聞けよい」と凄んで、ルフィくんに「ひゃい、ひゅみまへんれひた」と言わせたマルコさんがどこか手馴れて見えるのは何故だろうか。











まぁその理由はモビーでお世話になることになって1日も経たずに理解したのだけれど。

(えーーーーー?!!コイツをバナナのおっさんの船にやんのか?!いやだ!!!)
(いやだ、ってあんた、なんの為にこの島に寄ったとおもってたのよ。)
(いやだ!だっておまえ、コイツの作ったチーズケーキ食えなくなるじゃねェか!!)
(ヘェ…チーズケーキ、ねェ。そんなに美味ェのかい。)
(ああ、うんめェぞ!なんだバナナのおっさん、食ったことねェのか?)
(…あァ、残念ながら菓子類なんざ殆ど馳走になった記憶はねェなァ。)
(へー、そりゃもったいねェなー。あんなにうめェのになー。)
(ヘェエ、チーズケーキ、ねェ。)
(え、ちょ、なん、マルコさん、顔、怖…!近…!!)







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ちょっとなんか尻切れトンボ感溢れててすみません…!
長くなりすぎた…。麦わらさんチはロビンちゃん、フランキー、ブルック加入前設定です。
まぁ主にこれ以上登場人物増やすと収集つけられなくなるっていうわたしの力不足的な問題ですすみません。
というかこの人数で既にひどい有り様ですみません。
みんな好きなんだけどな…!

拍手本当に本当にありがとうございます(*´人`*)




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