不良、という人種がいる。今目の前にいる帝人とは正反対な、社会に適合しているとは言い難い存在。臨也も真面目な学生ではなかったが、彼らとはまた違った不真面目さと異常さを持っていたので同じカテゴリーに分けることはできないだろう。
自分を飾り立てることに必死になった揚げ句異様さを引き立たせる髪や服装。無駄に大きな声に、目付きの悪さや姿勢の悪さ。人の話を聞かない、喧嘩を簡単に売る、すぐに手を出す。そんな典型的な不良が、まだこの町には残っていた。臨也からしてみればイキがっているだけのただのガキなのだが、そのガキにも矜持というものはあるらしい。
臨也に仕事を依頼してきたのは、頭の悪そうな不良ばかりが集まってできた一つのグループ。このあたりでは有名らしく周りの人を見下すような不快な目をしたガキ共のグループだ。彼らは自分たちが一番強いのだと、何を基準にしたのか分からないのだが確信しているようで、他に目立つ存在がいるのが気に入らないのだと言っていた。そこで黄巾族あたりに目をつけて返り討ちにあえば話も簡単だったろう。しかし彼らも勝てる見込みのない喧嘩を売るほど馬鹿ではなかったようだ。不良たちが潰そうと考えたのは、ダラーズ。帝人がリーダーを務めるカラーギャングである。

「それでですね、もうすぐ試験があって」
「帝人君、頭いいんでしょ。そう心配することないんじゃない」
「僕、英語が苦手なんです。あれだけはどうも……」
「へぇ、意外」
「理系は好きなんですけどね」

帝人は普通の高校生だ。少し気が弱くて優しい、普通の高校生だ。そんな彼がリーダーなことなど知らないだろう不良たちは、よりによって帝人を好いている臨也に依頼を申し込んできた。
ダラーズに関する情報を、こちらが求めるだけ寄越せ。
一応臨也もダラーズの一員である。普通ならば自分の所属するチームを売るようなことなどしないだろう。けれど彼に関しては少し話が違う。そもそもダラーズに愛着などないのだし、それ以上に不良たちがダラーズを潰してくれるのは都合がよかった。臨也は帝人が好きなのだ。確かに帝人の行動に興味はあるけれど、好いている以上危険な目には合ってほしくないと思っている。彼がダラーズをやめてしまえばかなり安全になるはずだ。不良たちに情報を与えるのは臨也。帝人を危険に曝すことなくダラーズを窮地に追い込むくらい可能だろう。けれどそれで帝人が悲しむのはいただけない。それだけが気掛かりで、この仕事に乗り切れないのだった。

「帝人君」
「はい?」
「大丈夫だからね」
「? はい」

首を傾げる帝人に笑いかけ、臨也はポケットに手を突っ込む。その柔らかそうな髪に触れるのは、全てが終わってからでいい。
最近臨也の動きに邪魔を入れるのは、ダラーズが潰されては困る輩だろう。形がないゆえに利用価値が高いのがこのチームだ。臨也を止めたがる人間はかなりいるのだろう。けれど臨也は今回の仕事をやめるつもりはなかった。

(横槍などいくらでも入れればいい。何もないよりは面白いだろう。負ける予定はないけど)





とりあえずここまで




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