生まれた、日





03/21 01:13

携帯を開いて嘆息するのもこれで何度目だろうか。いつの間にか日付が変わりもう一時間以上過ぎてしまっている。かなり遅い時間だというのに眠気が訪れないと、帝人は一人悩んでいた。パソコンを開いても本を読んでももちろんベッドに横になりもしたが、眠れない。冴え切っている目を開いて考えるのは恋人のことである。
今日は帝人の誕生日だ。生まれてから十六回目の誕生日。何かの区切りでもないし特別なイベントが待っていはしないのだが、今年は去年までとは違う。今年は、ここ池袋でできた恋人がいるのだから。
正直、期待していた。相手はもちろんこの日が誕生日だと知っているし、帝人のことを大切に思ってくれているのは伝わってきている。別にプレゼントが欲しいというのではない。ただ、例えば日付が変わったと同時にメールをくれるだとか、そんな何か恋人らしい事柄に憧れていたのだ。けれど携帯もパソコンも未だメールは0通である。

「何だよ……」

子供っぽい自覚はある。お祝いがないだけで拗ねるなど、寛大だとは確実に言えないだろう。恋人が暇でないことは分かっているし、別にメールをすると約束していたわけでもない。ここで苛立つのはお門違いのはずだ。
けれどやはり寂しさは否めない。せっかくの特別な日。帝人が生まれてきたこの日を喜んでもらいたい。いてくれてよかったと笑ってくれたなら、それだけでいいのだ。

03/21 01:18

時間は着々と進んでいく。眠たくはないが、無理矢理にでも目を閉じていないと朝に起きることができなくなるかもしれない。昼からパーティーをしようという話をもらっているのだ、寝不足な顔で参加するのは申し訳ない。どうせもうメールも何もないだろう。このまま寝てしまおうと布団を被った、瞬間。
ものすごい勢いで扉が叩かれる音がした。部屋の中にいる帝人を起こそうと躍起にでもなっているような力強さだ。ということは当然ご近所さんも起こしてしまう可能性があるわけだが、そんなことはお構い無しに帝人は満足げに微笑んだ。
来てくれた。メールでも連絡なしでもなく、直接来てくれた。諦めかけていた分堪らなく嬉しくて急いで玄関へ向かう。開いた先には、大好きな恋人の笑顔があることを祈りながら。そしてきっと、帝人を抱きしめて言ってくれるのだ。

「誕生日おめでとう」





HAPPY BIRTHDAY!!





END.

2010/03/21


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