恋愛談議

とても会話文。





「恋愛、という言葉は、ひどく曖昧なものだと思わない?」
「またおかしなことを言い出しましたね……」
「酷いなあ。聞くだけ聞いてくれてもいいじゃないー」
「はいはい、分かりましたよ」
「ありがと! でね、恋と愛が一緒に扱われていることについてだけど、甚だおかしいことだと思わない? 確かに好意という意味では同じなんだろうけどねぇ。恋は下心、愛は真心と言うくらいだから、その本質は全く別のものなはずなんだよ」
「よく、分かりません」
「そうだな、レベルが違うとか価値が違うといったところだろうね。言うなれば、ダイヤと鉛筆の芯かな。同じ物質から出来ているはずなのにその性質も値段も天と地かというくらいに異なるでしょ? そういう話なんだよ」
「ああ、なるほど」
「俺が人類に抱いているのは紛れも無く愛情だ。この上なく美しく貴重で尊い愛! それはもうダイヤモンド級の強さと可憐さを持った感情であるわけさ」
「……僕には一切理解できないところにある感情なんだなってことくらいなら把握できました」
「そこで、帝人君。君だ」
「へ?」
「俺が君に抱いているのは、愛情と呼ぶには薄汚れて醜くて面倒臭いばかりのものなんだよね。何て言うか、爪の間に刺さった棘みたいな」
「そ、れは。どう解釈すればいいんでしょう?」
「そのままなんだけどなあ。それで最近、この初めて得た感情に困惑と苛立ちを弄びながら、俺は思ったわけだ。これが恋だ、ってね」
「はあ」
「つまり君は特別なんだよ、恋という感情でもって俺に思われてるんだからね」
「でもそれって、先程の臨也さんの言葉を借りるなら、鉛筆の芯のような思いを向けられてるってことになるんじゃないですか」
「あはは、ちゃんと聞いてくれてたんだね、嬉しいよ。そうだなあ。恋って、脆くて移ろいやすいものだからね。すぐ折れて安いものってことで、言い得て妙じゃない?」
「浮気な感情ってことですか」
「俺にとっての恋は一つしかないから浮つく隙もないよ、安心して」
「……不安要素で胸がいっぱいです」
「どういたしまして!」





END.

2010/03/14


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