▼ 06
今日は待ちに待ったスパナのお休み。いつもは出来ない事をして普通のデートっぽい感じでスパナと一緒に楽しく1日を過ごす、つもりだった。
しかし
「すまない。昨日仕事が残ってるの忘れて買い物行ったから、その分がまだ終わってない…」
スパナのこの一言によって全ては崩れ去った。
「えっ…それってすぐ終わるの…?」
「……わからない。でも早めに終わるように出来るだけやってみるつもりだ」
なんてこった。その言い様じゃ今日中に終わるかどうかわからないみたいな言い方じゃないか。いやでもスパナだしきっと終わるよね?っていうか元はと言えばあれから直ぐに帰らないで公園にスパナを連れていった私が原因なんじゃ…?きっとかえってすぐ仕事に取り掛かったならもしかして終わってたかも…?
そんな考えが名前の頭の中を支配する。うつ向いて黙り込む名前を一瞥すると、機械を弄る手は止めずにスパナは言った。
「そう落ち込むな。これは服を用意してなかったウチの責任」
「でも…」
「それに、こんなものすぐに終わらせる」
さっきは『出来るだけ』と自信無さげだったが、今はきっぱりと言い切った。おそらく名前にそんな顔はさせまいと、スパナの心に火が付いたのだろう。
名前はスパナの背中に向かってありがとうと小さく呟き、ソファーに身を預けた。
結局、スパナが仕事を終えたのは夕方で、大分日も沈みかけていた。
「…終わった」
一息つきながら後ろを振り返れば、スヤスヤと気持ち良さそうに寝息をたてている名前。
つくづくマイペースだなとスパナは改めて感じた。
しかしここで起こすスパナではないので、名前の体にそっと毛布かけ、自らは明日の仕事を少しでも減らそうと次の作業に取り掛かった。
少したった頃、日頃の疲れが出てきたのか自然と瞼が落ちてくる。寝てはいけないと言い聞かせてもやはり睡眠欲は強い。
そして、持っていた工具がカタンと音をたてた。
眠りについた二人の夢の中にはきっと、
互いの姿が写し出されていることだろう───。
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