04





スパナは店に着くと早速服を吟味し始めた。勿論つなぎのままで。だがしかし、どんなものをどんな風に合わせていいのか分からない。

結局店の人にコーディネートしてもらうこととなった。


「そちらの商品ですとこちらが良いかと思いますよ。ご試着でしたらここでどうぞ」


何も言わないうちに店員はどんどん話を進めていく。まぁ仕事だから仕方無いのかもしれないが。

大人しく試着室に入って渡されたものに袖を通せば違和感。いつもつなぎだからだろうか。とりあえず着替えを済ませ仕切りを開ければ待ち構えた店員が目を丸くした。












「とてもお似合いですよお客様!」


そんな絶賛の声が買い物を終えた名前の耳に届いた。それはすぐそこのメンズの店から聞こえたもので、無意識にそちらに目がいってしまう。


「え……?」


すると名前の目に飛び込んできたのは少し戸惑ったようなスパナの姿。そして彼はいつものつなぎ姿ではなく誰もが振り返るような容姿をしていた。…ある意味普段のスパナも目を引くが今はそういう意味ではない。

普段から整ってはいたが、服を変えるだけでこんなにも変わるものなのかと心の底から思った。


「スパナっ!」


駆け寄った名前にスパナは目を剥いた。


「名前、なんでここに」

「ん?いやぁ実は私も買い物に」


そう言って手に持っている袋を掲げて見せる。


「それよりさ、スパナめっちゃカッコいいんだけど」

「そうか?」

「うん!!」


「あのー…」


そんな時、側にいた店員が言いにくそうに声を上げた。


「彼女さんですか?」


そんな問いにスパナは大して表情を変えることなくそうだと告げた。


「あ、そう、なんですか。…えっとそれでこれはこのまま着ていきますか?」


あまりにも平然と答えられたため対応に困っていたみたいだったが、話は服の事へと戻された。


「いや、これは「はい、このまま着ていきます!」


スパナの台詞を遮って名前は言い放った。


「承知しました。ではこちらへ」


次から次へ状況が変わるのにスパナは着いていくのが精一杯だ。


「何する気だ」


当たり前のように隣に並ぶ名前を見下ろせば、名前はニッコリと笑みを浮かべた。


「何ってデートだよ。折角会ったんだからどっか寄ってから帰ろうよ!」

「これは明日のための服なんだけど」

「まぁいいじゃん!」

「はぁ」


結局、アジトには真っ直ぐ帰らず寄り道をすることになった。



いつもいつも


名前には振り回されっぱなしだ。









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