02





「スーパーナー」

「なんだ」

「暇ー」

「あんたはそれしか言うことが無いのか」

「そんなことないよー」


今日も同じくソファーに身を埋め、クッションを抱えている。

これは毎日のことなのでスパナは呆れ顔だ。


「口を開けば暇だ暇だと。そんなことを言うんだったら何かしたいことを見つければ良いじゃないか。あんたはないのか?趣味みたいなの」

「うーん…。スパナを観察すること?」

「…………。」

「え、なんで黙るの」

「…他にはないのか」

「スパナをいじること?」

「…………他には」

「スパナと遊ぶこと!」

「……………。」


名前の趣味はどうやら全てスパナ関係らしい。全体的に趣味と言えるのか危ういが。

それでも彼女がニコニコと言うものだから、スパナは何と返して良いものか分からない。一度、名前の頭の中を覗いてみたい。


「…何かウチ以外に趣味を探した方がいい」

「え、なんで!?」

「ウチ、死亡する」

「尚更意味が分からないんだけど!?」


一日中作業する姿を見られいじられ遊ばれてはこちらの身が持たない。
まぁ名前にかまってあげられない自分にも少しは非があるのだろうけれど。


「名前はウチばかり見ていて飽きないのか?」

「ぜんっぜん飽きないよ!!だってスパナだし!」

「意味が分からない…」


本当に意味が分からない。その自信に満ちた確信はどこから来るのか。


「そういうわけで、私はスパナを見ていれば十分癒されるから心配は無用だよ!」


最初から心配などしていなかったが。そう思ったが口には出さないでおいた。

その代わりに出したのは以前話していた話。


「そういえば、明日は仕事が何もない。どこか行きたいとこはあるか?」


機械をいじる手を中断して後ろを振り替えれば、目を輝かせた名前がソファーから身を乗り出してこちらを見ていた。


「明日暇になったの!?ほんとに!?んーとじゃあねー…うーん…」

「………。」

「……………えーと…あー!!だめだぁ!!決めれない!!明日っ明日まで待って!!」

「こういうのなんて言うんだっけ……優柔不断…?」

「…違うしっ!!」

「ま、どうせ行動するのは明日だし、明日までに決まればいい」

「おしっ!じゃあちょっと私部屋に行って考えてくるね!!」


がばりと立ち上がった名前は勢いよく部屋を出ていった。スパナは考える。彼女がリングを持っているとすれば雲か嵐ではないか。それかあの明るさは晴れの可能性もある、と。

どうでもいいことを思った次に、スパナはハッとなった。


「そういえばウチ、つなぎしか持ってない…」


デート前日、彼は大変な事実に気づいたのだった───。










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