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スパナに手を引かれてやって来たのはアジト内にある大きめのホールのようなところ。

どうしてここに来たんだろう?

扉の前でこんなことを考えていたら、スパナがそれを開いた。



目の前に現れたのはファミリーの皆。雲雀も骸もいてかなり驚いた。

足元には赤いカーペットがひかれていてそれに沿うように皆が立ち並んで一つの道を作っているみたい。


「え?何?」


いまいち状況が把握出来ず隣を見るけれど、スパナも驚いているようだった。


「こんなことするなんて、聞いてない」


二人して固まっていたら


「何してるんですか二人とも!早く入江さんのところに行ってください!」


と、ハル。

よく見るとカーペットの先には正一が立っていて悪戯な笑みを浮かべていた。


「もしかしてこれ…」

「いいからさっさと歩きやがれ」

「きゃあ!?」


後ろからトンっと押されて一歩前へ。振り返るとそこにはリボーンの姿。いつ見ても気迫ある姿だな…。


「名前」


スパナがすっと肘をこちら側に出してきたので、私はそっとそれに掴まって二人揃って歩き出した。


一歩踏み出すごとに祝福の言葉を受けて、私は笑みを返す。

ボンゴレだけじゃなくて、キャバッローネの人達も来ててかなりビックリした。




「「正一」」


同じくして名を呼んだ私達に正一は苦笑。そして軽く咳払いをすると声のトーンをいつもより少しだけ落とした。女の子なら誰もが憧れるであろうこのシーン。


「健やかなるときも、病めるときも………」



まずはスパナに向けられる言葉。ちらりと盗み見ると、スパナは真剣な眼差しで正一を見据えてる。


「誓いますか?」

「誓います」


普段聞きなれないスパナの敬語。即答してくれたことが嬉しい。


「………一生愛していくことを誓いますか?」


気づいたら私の番になっていて、今度はスパナがこっちを見ている。


「誓います」


目と目で会話して微笑みあうと、正一が少し砕けた口調になって言った。


「……っと、指輪の交換はしたみたいだからー…次は誓いのキスを」


その言葉で私達は向かい合う。顔を近づけてきたスパナの目はまだ開いていて思わずその目をずっと見つめた。


「名前」

「は、はい」





「愛してる」





そうして繋がった唇。



女の子達の色めきの声が、どこか遠くに聞こえた気がした。








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「名前ちゃんおめでとう!」


そのあと立食パーティーのようなものが開かれて私達のところには次から次へと人が来る。


「ありがとう京子!」

「でも残念です…ウエディングドレス着たらもっと可愛かったのに…」

「ううん。これで十分だよハル」


スパナから聞いたところによると、スパナが正一に頼んで最初はこのパーティーで私達の結婚のことを御披露目するはずだったらしい。

でも正一は折角だからとプチ結婚式を開催することにした。生憎衣装は無かったらしいが、これ以上してもらったらバチがあたりそうだ。


…で、二人がいなかったのはケーキを買いに行っていたからで、イーピンや他の守護者は会場の飾り付け、ツナとビアンキと正一は私がそこへ行かないための足止め係だったらしい。リボーンは…万が一の見張り役。

最もスパナが私を見つけるのに苦労しないためにツナとビアンキは正一の元に行かせるつもりだったとか。


これを私以外のみんなが知ってたとかなんか凄い複雑だけど…でも嬉しいからもう気にしない。


「それにしても料理作るの大変だったんじゃない?」

「そんなことないよ!みんな手伝ってくれたし、それに名前ちゃんに喜んで欲しかったから。ね、ハルちゃん」

「はい!」


二人とも、なんていい子…。





「名前、スパナ」


お次はツナがやって来た。…オーラが黒く感じるのは気のせいだろうか。


「結婚おめでとう。……名前が俺のとこに嫁いでくれなかったのは残念だけど」


気のせいでは無いらしい。いきなり何?というか、誰。いやツナだけどさ。


「ボンゴレ」

「ん?」

「いくらボンゴレでも名前はやらない」

「わっ…」


ぐいっと腰を引き付けられて体が密着。


「……ふーん」


黒ツナ様は意味深な笑みを残して去っていきました。


「ス、スパナ」

「何だ?」

「体が…」

「いいだろう夫婦なんだから」

「ふっ…!?えと…うん」


やっぱり急にこんなことをされたら私は弱い。自分からいくのはいいのだけど、スパナの方からこられるとどうも恥ずかしくなってしまう。


それからずっとスパナに腰を抱かれたままで、みんなにかなり冷やかされた。















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─数日後─



「おはようスパナ」

「…おはよう」


私が起きるとスパナはもう仕事を始めていた。

寝るときにはきちんとナイトキャップまで被るスパナに髪の乱れはない。失礼ながら隣で眠る私はやっぱりちょっと笑ってしまう。



「ねぇスパナ」

「どうした」

「暇」

「………あんたは結婚しても変わらないな」

「ま、それはスパナもだよ?」

「………。」

「えーなんで無視?また『暇だの歌』歌っちゃうよ?」

「あのセンスのない歌か」

「うわひどー」

「本当の事だ」

「…でさスパナ」

「ん?」

「暇!」









つれづれなるままに








→あとがきとおまけ


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