「名前さんちょっとここに寄っても良いですか?」


帰り道、彼氏のテツヤが示すのはマジバ。
返事二つで答えれば早速店内に足を踏み入れる彼。

お召し上がりではなくお持ち帰りらしい。


私は欲しいものが無かったから入り口の辺りで彼を待つ。


「お待たせしました」


店は結構混んでいたからまだ時間はかかるだろうと踏んでいたのにテツヤは想像以上に早かった。

それを口にすれば、


「僕も最初はそう思いました。人が多いのに乗じて順番を抜かされましたし…」


影が薄いせいもあるんだろうな。
心の中でそう思った。


「でも、抜かされてよくこんなに早く帰ってこれたね」

「…抜かされたままでは腹が立つので僕も順番を抜かしかえしてみたところ、見事一番前に辿り着きました」


…黒子テツヤ恐るべし。





マジバを出て歩道を歩く。


「そういえば何を買ったの?」


問えば彼は袋の中に手をいれあるものを取り出すと、これです、と言った。


「えっと…中身は…?」
蓋がされているために中身がわからない。


「バニラシェイクです」


普段と変わらない声色だが、少しだけ目が輝いて見える。
それを見て私は思わず笑ってしまった。


「よっぽど好きなんだね」

「はい」



帰り道にいつも寄る公園に着きブランコに座れば早速ストローをさしバニラシェイクを飲み始める。


「ねぇ、それそんなに美味しいの?」


隣で何も言葉を発しないテツヤに声をかけてみた。


「はい。とっても。良かったら飲んでみますか?」


何の躊躇もなく差し出されたバニラシェイクを前に私は取り敢えずそれを受けとり考えてしまう。

これ飲んだら、間接キス、だよね?
ど、どうしよう。

たかが間接キスごときで。
そう思う人もいるかもしれない。
だけど私にとっては一大事。

だって、まだキスっていうものをしたことが無いんだから。

私、良いんだよね?コレ飲んでも。
うん。大丈夫、きっと。






そう自分に言い聞かせてストローに口をつける。


「えっと、テ、テツヤ、ありがと…」


精一杯のお礼を言ってバニラシェイクを返す。


「…いえ。で、どうでしたか?」

「う、うん!お、いしかった!」


本当は緊張しすぎて味なんかほとんど分からなかったけれど。
もうなるようになるだろう。


「…名前さん」


暫く何かを考えていると思うと私の方を向き口を開いた。


「なに?」

「僕はこのバニラシェイクを飲んでも良いんですか?」

「………はい?いや、うん。全然いいと思うよ?テツヤが買ったんだし」

「いや、そういうことではなくて…」


テツヤは一体何が言いたいんだろう。


「その…間接キスに、なってしまいますが…。さっきは何も考えずに渡してしまい、名前さんも飲んでしまったので…」

「あ…もしかして私、飲まない方がよかった…?」

「いえそれは別に良いんです。えぇっと…名前さんの後に僕が飲んでも良いのかと…」


そうか。テツヤが言いたかったのは私がさっき考えていたことと同じこと。
それが嬉しくて、思わず笑ってしまった。


「なんで笑うんですか」


少し怪訝そうなテツヤに私は言った。


「いや、テツヤも同じこと考えてたんだなぁと思って」

「テツヤもって名前さんも考えていたんですか?」

「うん。実は」

「そうだったんですか」


そう言ってからストローに口をつけるテツヤ。


「味が…分かりません」

「また同じだね。美味しいって言ったけど私も分からなかった」


二人で笑いあった後、


「もう一度、飲んでみますか?」


テツヤはそう言ってバニラシェイクを差し出してくる。


「うん」



それを両手で受けとり
さっきより緊張が解けた状態で
それを口に含んだ。

美味しいと言ったときのテツヤの顔を思い浮かべて。




End.



――――――――――

終わり方が謎すぎる。
何が書きたかったんだろう…。

駄文ですが温かい目で見てくださると嬉しいです






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