名前さんを好きだと自覚して早くも1週間が経ちました。

名前さんは多分火神君の事が好きなんだと思います。火神君と話しているとき、顔が少し赤くなっているのが分かるんです。彼は気づいていないようですが…。それに名前さんはあまり僕と話そうとはしません。僕から話しかけても直ぐに何処かへ行ってしまう。


―そんなに火神君の事が好きなんですか?




「黒子、お前名前に告んねーの?」


帰りのHRが終わり、火神が話しかけてくる。


「告白なんて、できるわけないじゃないですか。」


だって彼女は君が好きなんだから。


「なんでだよ?」

「火神君には関係ありません。」


こんな事を言いたい訳じゃないのに。


「なっ…!!人が折角心配してやってんのに!!」

「別に君に心配されたくありません。」


思ってもいないのに。


「っそーかよ!!」

「言いたいことはそれだけですか?」


なのに彼を傷つけるような言葉ばかり出てくる。



「あぁそうだよ。」

「じゃあ僕、部活行きますから。」


本当はもっと違う言葉を言いたいのに。


「お前さ、その態度で名前と喋るなよ。」


僕が体育館へ向かう途中、背中に投げ掛けられた台詞。

冷たい言葉を放ってしまったのに、また僕と名前さんの事を口にする。

僕は振り向く事が出来なかった。






「黒子君遅いっ!!」

「すみません。」

「…まぁいいわ。早くアップとストレッチしてね。」


僕の雰囲気を察してか、監督はあまり追求してこなかった。

しばらくして火神君が入ってくるとさっきと同じように監督が声をかけ、その後名前さんがかけより何か質問をしている。

イライラしてもしょうがないのでプレイに集中する。

その日は幸いに火神君とは別メニューだったので彼と喋る事はなかった。


それから二日後、今度は名前さんに呼び出される。


「黒子君、火神君と喧嘩でもしたの?」

「どうしてですか?」

「だって最近一緒にいるとこ見ないし、それに…」

「それに?」

「火神君、落ち込んでいるようだから…。」

その言葉を聞いた瞬間パリンと何かが壊れた気がした。


「…名前さん、君は誰が好きなんですか?」

「えっ…?」

「1週間程前に言ってましたよね。好きな人いるって。」

「そ、それは…」

「僕は名前さんが好きです。」


音をたてて壊れたのは諦めないという意思。僕は今ここでフラれ、彼女に対する想いを捨てる。

そして彼女と火神君との恋を応援する。
まだ彼とは話せていない。後で謝らなくちゃ。
そう決意して真っ直ぐに前を見据える。

覚悟を固め、返事を待つ。


「失恋した。」


僕の心の中を読んでもどうにもなりませんよ。


「…と思ってたのに。嬉しいな、黒子君。」


僕が失恋して嬉しいんですか。結構ひどいですね名前さん…。


「これからもよろしくね!!」


これからも友達として接してくれるんですね。やっぱり優しいです。


「こちらこそよろしくお願いします。」ペコッと頭を下げる。


「じゃあ、今日は部活もないし帰ろっか!!あ、その前に火神君のとこ行こっか?」

「え。僕も行くんですか?」


帰る前に火神君に告白する場面を何故僕が見ないといけないんでしょうか。


「何言ってんの?黒子君いないと始まらないでしょ。」


それは君が火神君と付き合って、僕と友達だと言うことを改めて感じさせるためですか。


「嫌です、僕は行きたくありません。」

「そんなんじゃいつまでたっても前に進めないよ!?」


失恋を今さっきしたばかりなのにそれにけじめをつけてもう次の恋に進めと言うんですか。
想いは捨てると胸の中で誓いましたが、まだ次の恋には進みたくありません。


「いいです。進まなくて。」

「まったくもう…!!いいから行こっ!!」


半ば引きずられていく僕。
パワフルです。

名前さんは火神君教室にいるかなーとかなんとかブツブツ言っています。

案の定、火神君は教室にいました。


「大我っ!!」


教室の扉を開けたとたん、名前さんは火神君の名前を呼び彼の元へダッシュした。


「おまっ…!?学校では名字で呼ぶって言ってただろ!?」


火神君は教室をキョロキョロと見回し、誰もいないことを確認してホッと一息、つく暇もなく僕と目があった瞬間、


「く、黒子…!!??いつからそこに!!??」

「名前さんが来たときからです。」


そんないつからいたとかそういう以前に、2人はもうそういう関係だったことにビックリです。


「大我聞いて!!ついに付き合うことになったの!!」

「おおっ良かったな!!…だから名前で呼ぶなって。」

「いいじゃん?黒子君以外誰もいないし。もう勘違いされないし。」

「まぁ確かにそうだな。今日から名前呼びに戻すか?」

「良かった〜!『火神君』ってなんか変な感じがして嫌だったんだよね!!自分で提案しといてなんだけど。」


「火神君。」



つい2人の会話を遮ってしまった。
この際だから今言おう。


「ん?」

「この間はあんな言い方してすみませんでした。本当は嬉しかったです。」「あ、あぁ。別にいいよもう。それより良かったな!!」

「何がですか?」

「付き合うことになったんだろ?」

「誰と誰がですか?」

「黒子と名前が。」

「・・・・・・え?」

「「は?」」

「いやだって、名前さんは火神君と付き合ってるんじゃないんですか?」

「ちょ、まって黒子君。さっき告白してくれたよね?」

「はいしました。」

「それに答え返したよね?」

「はい。」

「じゃあなんで?」

「え、だって(要約すると)『黒子君とは付き合えないけどこれからも友達としてよろしくね』って事じゃないんですか?」

「・・・・・。」

「はぁ…。名前、お前何を言ったかわかんねーけどもっと伝わりやすい言葉で言ってやった方がいいぞ。」

「だね…。」


何か僕は勘違いをしているんでしょうか。


「黒子君。」

「はい。」

「私は貴方が好きなんだよ?」


はい…?


「…じゃあ火神君とは…?」

「付き合ってないよ?」

「ってか付き合うもなにも俺達従兄弟だし。あ、名前は女だから従兄妹か?まぁ従兄妹同士でも結婚とかはできるらしいけど俺達には一切そういう感情ないしな。ただ、小せぇ頃から一緒にいるから名前呼びが定着しててさ、『お互い名前呼びは黒子君に誤解されるから学校では火神君って呼ぶ!』って名前が勝手に決めつけたんだよ。」


火神君は淡々と説明する。


「そう、なんですか。じゃあえっと…名前さんが火神君と話す時に顔が赤かったのはなんでですか?」

「え゙。私顔赤かった!?」

「はい、少し。それとなんで僕とあまり話そうとしなかったんですか?」

「ゔ…。」

「それは全部黒子を好きな証拠だよなぁ?」


答えようとしない名前さんに火神はニヤリと笑う。そんな彼に名前さんは顔を真っ赤にしてあたふたしている。僕は何が起きているのかわけが分かりません。


「火神君、どういうことですか?」

「俺は名前にお前の事で相談受けてたんだよ。黒子君と仲良くなるにはどうしたらいいかってな。それで、とりあえず話しかけろって言ったら心臓破裂するから無理!!とか言って逃げんだよ。コイツ、黒子の事話すとすぐ顔赤くなるから…。」


でも今日の呼び出しは頑張ったな、なんて最後に付け加えて笑った。



僕は大きな勘違いをしていたようです。
僕たち両想いだったんですね。
今、とても嬉しいです。


「火神君色々ありがとうございました。」





お礼をいって教室を出る。


「帰ろっ黒子君!!」






夕日が帰り道を辿る二人を照らす。



(手、繋ぎますか?)
(いいの?)
(寧ろ、僕が繋ぎたいんです。)
(…!!つ、繋ぎます…!)



End.



──────────

まぁ…勘違い黒子ですよ…。
難しいですねはい。

読んでいただき感謝します




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