君に恋。 | ナノ

6.



目の前には目を丸くした水戸部くん。このままだとまた同じことをし、部活を見に行くことが当分できなくなる気がしてとりあえず私は思うままに口を開いた。


「あのね!走ってたのかなって思ったのは、その格好とか汗とか息遣いとかを見たからなの!!」


変態か私は。汗とか息遣いって…。
口に出してから思ったので


「あ、あと靴が外靴だったし!!」


そう付け加えた。
すると水戸部くんは驚きつつも納得したようで、こくんと1回頷いた。


「えと、水戸部くんは皆より先に来たの?」


水戸部くんはまた頷いて外の水道がある場所と体育館を指さした。

どうやら休憩が終わった人から体育館に行くことになっているらしい。

何か話すことはないかと話題を探していると、彼は少し屈んでじっと私を見てきた。


「ど、どうしたの?」


水戸部くんとの距離は手を伸ばせば届くくらいなわけで、そんな状態で見られれば心臓が静かにしているわけがない。
ただ、それよりも気になるのは彼の心配そうな表情で。でも小金井くんのように水戸部くんと意思疎通できない私には、彼の気持ちを汲み取ってあげることが出来ない。


「あの、何かあった…?」


ずっと黙っているからどうしたのかともう一度聞くとら彼は急に頭を下げる。


「えっ、えっ?」


突然の行動に困惑していると次には私の額にあてがわれた水戸部くんの大きな手のひら。


「みっみみみみみ水戸部くん!?」


大混乱。その言葉がまさしく当てはまる。

しばらくすると彼は手を離し自分の額に手を当てると、ほっとして安心したような顔をした。

そこで頭の中に一つの考えが浮かぶ。


「もしかして、熱があると思って確かめてくれたの?私顔赤かった?それともさっきうつむいてたからかな…?」

「!!!」


どうやら的中だったらしい。何度も頷く水戸部くんを見ると、考えは全て当てはまるみたい。


「余計な心配かけちゃってたね。あやまらなくていいの!!むしろ嬉しいよ?ありがとう!!」


また頭を下げようとするからそれを静止する。きっと、私に触れることを謝ってくれたんだろうなぁって勝手に思った。あぁ、彼はどこまで優しい人なんだろう。

しみじみと実感している中、バスケ部の声が聞こえだしてハッとした。

これから体育館でまた練習が始まるんだろうけれど、今日はもう帰ろうり胸がいっぱいすぎる。


「じゃあ私は帰るね!練習頑張って!」


軽い呼吸困難とニヤけにより顔面崩壊しそうになるのを抑え、精一杯の笑顔を彼に向け手を振った。

そして振り返してくれる水戸部くん。



胸キュンとはこういうこと。
ドキドキが止まりません。












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