君に恋。 | ナノ

5.



それから約1週間。耐えるに耐えてやっと部活を見に行く決心がついた。のに、


「あ、れ…?」


体育館には誠凜バスケ部のメンバーが見当たらない。…もしかしなくとも、今日休み…!?なんて運のない…。


「はぁ〜…」


とてつもなく大きなため息をついて、玄関の下駄箱が立ち並ぶところに座り込む。折角水戸部くんに会える…違う、見れると思ったのに…。あれから顔を合わせることなく時が過ぎ、かろうじて一日だけ、水戸部くんのクラスが外で体育の時間、私のクラスは教室で授業だったときに彼の姿を拝めたことがあった。でもそんな日に限って当てられて、目に焼き付けることなんてできやしなかった。

水戸部くん水戸部くん水戸部くん水戸部くん水戸部くん…水戸部くん水戸部くん水戸部くん…。

うん、想像以上に惚れてる。


「はぁ…水戸部く…ん?」


そんなときに膝に埋めていた顔をあげた。どうしよう本当に末期かもしれない。幻覚が見える。いや、明らかに現実だなこれは。あれ、水戸部くん?あれ?えっと、Tシャツにハーフパンツ…。頭ん中がごちゃごちゃしまくって何が起きてるかわからない。
…んで、結局


「水戸部くん!?」


叫んだ。

もしかして私、単細胞なのかも。

とりあえず落ち着こうと深呼吸。

首を傾げる水戸部くん。
カッコ可愛い!

…じゃなくて、状況把握だ。

服装は部活で着ているもの。
でも今日は体育館には皆がいなかった。
水戸部くんのおでこには汗が浮かんでて、少し息も荒い。
あ、ロードワークだったんだ。


「えっと、走ってたんだよね?お疲れ様!」


わりと自信満々に言ってしまった。

そしたら、
えっ
って顔された。


そして気づいたら私もえって返してた。

やだよもう。
同じ失敗は繰り返したくないです。




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