Clap





『Look at me!』

─番外編─

















私が彼と付き合うようになってからはや数週間。


気持ちの良い日差しを受けながら、私は屋上で彼を待っていた。




「おまたせっス〜」


相変わらず太陽みたいな笑顔でこちらに駆けてくる彼の額にはじんわりと汗が滲んでる。

きっと今日も女の子達を必死で撒いてきてくれたんだろう。


「お疲れ様です」


隣に腰を降ろした彼の額をハンカチで拭いて上げると少し頬を染めてお礼を言われた。


噂とはこわいもので、私達が付き合っていることは瞬く間に広がってしまった。


嘘よね黄瀬君!?

信じられないという女の子が皆同じ言葉を発する。

ここで否定すればこの騒動は収まるかと思ったけれど、真偽を問われている本人は臆することなく

いや、本当っスよ

とだけ口にした。


それが正しい選択かどうかは今でもわからない。それでも、その時の私は嬉しさでいっぱいだったんだ。



「じゃあ、お弁当を食べましょうか」

「そうっスね」


目があってお互い微笑み、私達はお弁当を広げた。



「あの、涼太さん」


暫く談笑しながら食事を終えたあと、私は心を決めて彼に話しかけた。


「どうしたんスか?」

「えっと…今度のお休み、一緒に買い物に行きませんか…?」

「え?」


いきなり誘うというのはやはりまずかっただろうか。

それとも誘い方が変だったのだろうか。

その辺は私にはわからない。だって私はこれまでデートに誘うなどしたことがなかったのだ。


「あの、すみません…嫌なら別に…」


無言の状態が堪えられなくて、涙が出そうになった。


「あ、ち、違うっス!」

「…何が違うんですか?」

「その、誘ってくれるなんて思いもしなかったから」

「…だめでしたか?」


そう思えば思うほどネガティブになっていく私。そんな私に対して涼太さんは満面の笑みでむしろ嬉しかったと言い、絶対行くと指切りまでしてくれた。



「それで、まだ“さん付け”は卒業しないんスか?」

「あ、えと、」


付き合うことが決まった日からお互い名前呼びにするはずだったけれど、私にはすぐにそれが実行出来ず、とりあえずは涼太さんと呼ばせてもらうことにした。

そして、それを友人に話したところ…



名前にさん付けって…なんかむしろあんた達新婚みたい


などと言われ赤面せざるを得ない私は涼太さんではなく涼太と呼ぼうとしたけれど、結局は無理ということになったのだった…。



「こういうわけでして…」


恥ずかしさで俯きながら話していた私は彼の表情などわかるはずもない。反応を確かめるように私は少しだけ顔を上げた。


「涼太さん…?」

「それ、否定しなかったんだ?」

「あ…そう、ですね。しなかったです」


恥ずかしくてそれどころじゃ無かったし…。



「予約」

「へ?」


なんのことだかさっぱり分からなくて変な声が出た。



「今はまだ無理だけど、いつか渡すから」


触れられたのは左手の薬指。


「俺の気持ちは多分一生変わらない。だから、予約」


そのまま手を彼の口元に持っていかれて、キスを落とされる。


「いい?」


見据えられて答えを問われる。



いきなりのことで声も出ない私は一つ頷くことが精一杯。


それでも私の答えを聞いた彼の顔はこれから先何年経っても忘れることはないだろう──。




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勢いで書いてしまった番外編

最後が唐突すぎて酷いことに…

にもかかわらず
もしかしたらまた書くかもしれません。

あたたかい目で見ていただければ嬉しいかぎりです


ここまで読んでくれた方
ありがとうございました!






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