どの家からも明かりが消える頃
近所の道を何も考えず行き先も決めず、ただただぶらつくのが好きだ


微かな街灯の明かりに照らされながら不安定に進む私と、私にぴったり寄り添う私の影はいつか溶け合って一つになれるだろうか



そんな事を思って急に歩みを止めてみても、影は一向にその距離を縮めてはくれなかった


でもこのままあてもなく歩き続けたら、いつかは

闇が徐々に伸びてきて、じわじわと侵食されていく私の身体






「名前さん」


「ベルゼ…」






どこまでも私を追ってくる影を振り返りながら歩いていると、ふと進行方向から聞き慣れた声がした


顔をあげるとそこには、街灯の光に照らされながら微かに微笑むベルゼブブ



何故だか人型をとっている今の姿は何処ぞの国の王子ですと突如打ち明けられれば「ああそうですか」と納得してしまうような優美さ

相変わらずだが悪魔のくせに。しかも蝿の






「何してるんですか?」


「…散歩」


「そうですか」


「帰りましょうか、名前さん」






そう流れるような動作で差し伸べられる手に「これこそ本当の王子みたいだな」なんて


その手を戸惑いながらも取ると、まるで何かを繋ぎとめる様に力強く握られた