「名前、Merry Christmas!」
部屋の飾り付けをしていると、明るい声がドアの向こうから聞こえてきた。
「…カドルス?」
「そうだよ、僕だよ!」
ぱたぱたとドアへ走り寄り、ノブを捻る。開けたと同時に、真っ赤な服を着たカドルスが部屋へと飛び込んできた。
「わっ、カドルス」
「えへへ…名前、今日はクリスマスだよ!」
「そ、その赤い服は…?」
名前がそう尋ねると、カドルスは「これ?ランピーが作ってくれたんだ!」と目を輝かせて言った。
「サンタの格好だよ!」
「すごいね…」
カドルスに赤い服。思わず、いつもの血塗れの姿を連想してしまう。
「ねぇ名前、ツリーの飾り付けは終わった?」
「え?ま、まだだけど」
「じゃあ僕が手伝うよ!サンタだから、名前にお手伝いのプレゼントね!」無邪気にそう言ってずかずかと上がり込むカドルスを、慌てて追う名前。
「うわー、名前のツリーおっきいね!頑張って飾らなきゃ!」
「うん…ありがと、カドルス」
小さなリースを手に取り、ツリーの周りをぐるっと歩き始めるカドルス。名前はそんな姿を眺めながら、内心ハラハラしていた。
「カドルス…気をつけてね、怪我とかしないでよ」
「うん、大丈夫!」
この町でカドルスが、目の前の少年が生きていた日は少ない。いくら明日生き返るとはいえ、やはり誰かが死ぬのは見たくなかった。
「うわ、っと」
「危ない!!」
足元に転がっていた飾りがカドルスを躓かせる。名前は慌てて駆け寄り、尻餅をついたカドルスを心配そうに見つめた。
「大丈夫?カドルス、怪我は?」
「大丈夫、僕男の子なんだから!」
にこっと笑うカドルス。その笑顔に安心すると同時に、今日という日を無事に過ごして欲しいと心から思った。
「カドルス」
「なあに?」
「私も一緒に飾る」
「うん!」
カドルスには安全な丸い飾りを。足元の飾りは全て箱に入れて。隣でニコニコ笑うカドルスには、満面の笑顔を。

せっかくの聖なる夜だけど、恋人同士みたいな睦言はいらない。
あなたが生きていて、私が生きていて、一緒にいられるこの時間が最高の幸せだから。

「I wish your Merry Christmas、カドルス」



貴方に最上の祝福あれ






------
企画サイト「リーブラの思慕」様に提出させていただきました!