・主人公はバドーの妹

※一部暴力表現が含まれますので、閲覧の際は御注意ください



















ドン、ドン、ドン、ドンッ!!
ドドドドドドドドドドドッ!!
ヒュッ、ザクッ、ザンッ、ドンッ!!

とあるビルの廃墟に平穏な日常に正直聞こえてほしくない音が、盛大に響いていた。

「ちょっとちょっと。ハイネくん、いつものようにビル半壊は止めてよね。」

イングラムとサブマシンガンを使って敵に向かってバンバンぶっぱなしているのは、ハイネに無理矢理連れて来られて仕方なく応戦しているバドー・ネイルズ。口に煙草を咥わえているのは毎度お馴染みだ。しかし今回は安全ヘルメットというものがおまけに付いている。

「…バドー、俺に今までそう言ってきてやらなかったことある?」

対して、モーゼルとルガーで応戦して、弾を上手く避けながら打っているのは、バドーを連れてきた張本人のハイネ・ラムシュタイナー。

「ちょいちょいお二人さん。暢気に話してる場合?敵さん、どんどん増えてってるよ。」

そして、バドーと同じ髪色と瞳の色を持ち、鎖鎌と銃で応戦しているのはバドーの妹、名前・ネイルズ。こちらは煙管を口に咥えている。

「うっせぇよ名前。んなこたぁ分かってる。」

「なら話してないでさっさとやってよ。」

「そうだぞバドー。」

「……ねぇハイネくん。君今まで俺と話してたよなぁおい!」

「…………」

ドン、ドン、ドン、ドン!

「無視かよ?!」

「ほら、兄さんもハイネに習ってちゃっちゃと片付けようよ。」

「てめぇ…」

「んで、さっさとリザさんとこ行って報告して、ニルんとこ行こ。」

「あのなぁ、んな簡単にいうけどそれでやったら今頃は終わってるぞ!?」

「……ねぇ、ハイネ。兄さんのタバコ奪って良い?」

「ちょっとまて名前!何で急にそっちに行く!?」

「ああ。良いんじゃねぇか?」

「ちょっとハイネくん!?君までんなこといって……ってあ゙ーーーー!俺のタバコーーーー!」

タバコを吸っている時の兄さんはとてつもなく弱気で面倒事は避けるような性格だが、タバコをほんの数分吸わないだけで一気に好戦的(只のニコチン切れの暴走)になる。

私は兄さんが口に咥えていたタバコを奪い、下に落として靴で踏みつぶした。











因みに、これが最後の一本だったそうな。

「はい。頑張ろー」

抑揚のない何時もの声でハイネが兄さんの肩をポンポン叩きながらそういった。

「てめぇら…」

兄さんが蟀谷(こめかみ)に青筋を立て、こちらを睨みながらそういった。

「名前、」

「何?ハイネ。」

「バドーくんの暴走タイムが始まるから、隅っこにいようぜ。」

「さんせー。」

後ろで、兄さんの盛大なツッコミが聞こえるが敢えて耳に蓋をして、私とハイネは隅っこの方へ移動した。

「あーぁ。おまえ、仲間に見放されちまったな。」

「丁度良くね?この隙にこいつだけ殺してさ、後であの2人殺ろうぜ?」

「おっ、いいねー。その考え。」

敵方のファミリーの一部の方々が言った言葉が癪に触ったのだろう。

下に俯き、微動だにしなかった兄さんの肩が先程の言葉で肩がプルプル震え始めた。

「おっ、肩が震え始めたな。」

「コイツ、怖くなったんじゃね?」

「ハハッ!そうかもな!」

「んな訳ねぇだろうが、糞がぁぁぁぁぁあああああああ!」

相手の言葉に被せる様に兄さんが叫び、イングラムとサブマシンガンを持ち直し、ファミリーに向かってバンバン撃ち始めた。

「おんどりやぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」

「な、な、なななななんですとぉぉぉぉぉおおおおお!」

ニコチンが切れたのだろう。いつも争いごとを好まず全てを穏便に済まそうとしている兄さんが、ああも乱射しているのが何よりの証拠である。
















そういえば、叫んだ時に兄さんの目からビーム的なのが放たれたのは気のせいだろうか?

気のせいだと、しておこう。

例え、先程まで兄さんが立っていた天井が丸く等間隔で焦げていたとしても。

「U〜B〜,DE〜STROY〜〜!!」

「おーおー、今回もまたすげーな。」

呑気にハイネがいう。

「ははっ。相当きれてるネ。あれ。」

こちらも暢気にいう名前。

「あはははははは!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」

「お、おい!逃げるな!」

「うわぁぁああ!こっち来たぁぁあああ!」

「無茶苦茶だろ!こんなのぉぉぉおおお!」

例え、兄さんの笑い声が聞こえようがファミリーの皆さんの叫び声が聞こえようがお構い無しである。

「そろそろバドーのやつ、疲れてきたか?」

「んなこというってことは、ハイネもドンパチやりたいってこと?」

「…………」

「ははっ。図星?」

「………良いか?」

「…良いんじゃない?私的にはさっさと終わらせたいし」

「サンキュー。」

ハイネがしまってあった銃を取り出したので、私も鎖鎌を出した。

「おまえはここにいろ。」

「…自分の身ぐらいは自分で守れるわよ。」

「そうじゃない。」

「じゃあ、何?」

「おまえが強いのは分かる。あまり怪我をしないのも分かってる。」

「だったら、何で?」

「…………ろ。」

「何?聞こえなかった。」

「……彼氏なんだから、心配して当然だろ。」

ぷいっとそっぽを向き、頬をポリポリ掻きながらハイネは言った。

「(ああ。昔と随分変わったな。)分かったよ。ここに居る。」

「……サンキュ」

ハイネが申し訳なさそうに眉を下げそういい、銃を持ち、暴れている兄さんの加勢に行った。

最も、兄さんをあんな風にしたのは、私とハイネだがここは敢えて加勢といってこう。

「(そろそろ、終わるかな?)」

それからしばらくして、銃の音が聞こえなくなった。

それが、(いろんな意味での)終了を表していた。














「はい。お疲れさん。」

あれから逃げるようにして(今回もど派手にやらかしたから)ビルから立ち去り、この仕事を依頼したリザさんの所へ報告に行き報酬を貰い、兄さんがお腹すいたと言ったのでわたし達はBuon viaggioに向かって歩いている。

因みに兄さんが途中でタバコを1ダース買って今は2個目が吸い終わりそうな所まで来ている。

相変わらずのヘビースモーカーである。

「おまえ、よくそこまで吸えるなぁ」

「口元が寂しいからしょうがないだろ?」

「まぁまぁ、ハイネ。兄さんのヘビースモーカーは今に始まった事じゃないからさ。」

「まぁ、そりゃあそうだがな。」

「私も同じでヘビースモーカーなんだからさ、所謂血筋ってやつ?」

「名前がバドーに似て俺は悲しい。」

「ちょっとハイネくん!?俺たちは兄妹なんだから仕方なくね!?」

「………名前がバドーの妹じゃなきゃ良かった。」

「ひでぇなおい!」

「ははっ!やっぱり兄さんのツッコミは最高!!」

「お前なぁ……!」

こんなやりとりはいつものことである。

「そういえば、名前」

「何?兄さん?」

「何でおまえ、ハイネの事好きなの?」

「……………は?」

「………………え?」

「いや、前々から気になってたんだよ。なんで俺の可愛い妹がこんな仲間を見捨てるような薄情な奴の事が好きなんだろうって?」

「………バドーくん、最後の言葉は余計だ。まぁ、俺も気になってた。」

「兄さんだけじゃなく、ハイネまで!?」

「「あぁ。」」

二人揃って同じ言葉言わなくても良いのに……

「うーん、強くて、カッコよくて、意外に優しくて……」

「俺にも当て嵌んねぇかそれ?」

「シスコンは黙ってろ。」

「うっせー。」

「…………あっ。後ね、瞳の色!」

「瞳の、色?」

「うん。その赤い目がさぁ、何か吸い込まれそうなぐらい魅入ったんだよねー。初めて会った時。多分、それが好きになったキッカケだと思う。」

「ふーん。何か俺納得行かねぇ。」

「何で?」

「……そんだけのことで惚れられるハイネがうぜぇ。」

「うっわー。兄さん嫉妬ぉ?」

名前はニヤニヤ顔でいった。

「うっせーな!だぁー!なにもかも全部ハイネの野郎のせいだぁー!」

「本人いるのに言っちゃう?ねぇ、ハイn………」

「あん?どうした?名前……」

名前がハイネに向いて言っていたら急に声がしなくなったので、不審に思ったバドーがそちらを向いてみると、

「…………っ…!」

顔を真っ赤にしたハイネが口元を抑えてこちらを見たまんま固まっていた。

「…………あ、あれ?」

「……ちょっと、ちょっと、 ハイネくーん?もしかして、照れてるぅ??」

「なっ!ば、ば、馬鹿!んなわけねぇだろ!ほ、ほらさっさと行くぞ!!」

「「(うっわー。あのハイネが照れてるー。何か新鮮ー!)」」

未だに、顔が赤いハイネは誤魔化すかのようにさっさと歩いていく。

「いこっ。兄さん。Buon viaggioに行ってからまた弄ろう。」

「ははっ!そうするか!」

こうして、は道中照れて顔が真っ赤になったハイネを茶化しながらBuon viaggioに向かうのであった。

そして、しばらくハイネはこのネタで散々弄られるハメになったのだった。