※本篇ネタバレ? 「鏡花さん、音二郎さんの演技凄かったですね。」 夜叉ヶ池を見た後に鏡花さんと共に歩いていた。 「ふん、僕はまだ夜叉ヶ池を公開するつもりはなかったのに…!」 口ではそう言っているものの、どうやら嬉しそうな顔をしている。 相変わらず素直じゃないな、と思いつつその様子に名前も顔をほころばせた。 「なに笑ってるんだよ。」 「ふふ、いや相変わらずだなぁーと思ったんです。」 今回の夜叉ヶ池を公演することを、なんだかんだ言って了承していたから。 本当に嫌なら自分の書いた戯曲を音二郎さん達が演じることを止めていただろう。 「あ、」 「なんだよ?なっ……何泣いてるんだよ!」 ポツリと、一雫が目から零れ落ちた。 「ち、違います。雨が…」 それを皮切りに大粒の雫が空から沢山落ちて来た。 先程落ちたのは額をつたって落ちた雨だったのだ。 「はぁ…あんた、水難の相でも出てるんじゃないの。」 「まさか…」 そうは言ったものの心当たりがありすぎるのも、また事実だった。 意味を知らずに相合傘をしてしまった時や龍神である白雪を収める為に不忍池での一件も水だった。 「ほら、そんなところに突っ立ってたら濡れるよ。」 「わ、何処行くんですか。」 ぐいっ、と腕を引っ張られた。 「茶屋だよ。」 「え、」 その言葉に唖然とした。 前回の件があったから尚更だ。 「何勘違いしてるの?出会い茶屋の訳ないでしょ。」 唖然とする名前に鏡花は眉を寄せた。 「で、ですよね。」 恋の雨に降られて融けた (それは、始まりに過ぎない) |