“バシャッ”

名字名前が美術室で自分の描いた絵にペンキをぶちまけたのは、コンク−ルに作品を提出する為にサ−クル全体の絵を集める当日のことだ。勿論、周りの作品に被害はないようにした。

「取り返し付かないよ!?どうすんの、名前!!」

友達は慌てて絵に駆けよった。緑色一色になったキャンパスを前にアタフタしていた。

「名字さん!あなたの受賞は確実だったはずなのに、何をやっているの!!」

先生には説教をされた。私の絵はコンク−ルで毎回入賞するから、先生は鼻が高かったらしい。

「別に、どうでもいい。」

皆の反応にその一言を残し、美術室を後にした。どんな反応にも興味はなかった。言葉通り、どうでもよかったから。

「絵とか賞とか、バッカみたい。」

誰も居ない中庭まで来て吐き捨てた。絵を描くのは好き。好きだから描いていた。だけどいつの間にか周りの評価は賞ばかり。

「好きで描いてんだよ!バカ−!!」

今度は空に叫んだ。好きだから描いているのに、賞が絡むとその発言は才能のある者の余裕として妬まれた。どんな絵を描いても才能という言葉で評価された。

「もう描きたくないよ…。」

皆に見てもらえるのは嬉しかった。賞を貰えるのは誇らしかった。だけど段々と私の目に写る色は褪せ、周りの評価がガラクタに見えた。

「好きなのに…描きたいのに……。見てもらいたいのに、誰にも見て欲しくないよ!!」

矛盾した感情が自分でもややこしかった。1人で好きなように描くのも楽しい。だけど自分の世界に閉じこもっていたら、私はこれ以上うまくなれない。それにやっぱり誉められたい気持ちもある。

「や−めたっ。」

何もかもどうでもいいと切り捨てた。何もかもを切り捨てた私には、世界は色褪せて見えた。今の私では何色も紡げない。