*現パロ

「名前、歌詞出来たか?」

「もう少し待って、後少しだから。」

ある放課後の部活の時間、名前は今度の文化祭で発表する曲の歌詞を書いていた。

因みにバンドのメンバーは私と元親と政宗と佐助だ。

「すまねぇな。おめぇばっかに任せっきりで。」

「別に構わないさ。歌うのは私だし、メロディーを付けてくれる佐助も文句言わずやってくれるし。それに、」

「あん?」

「元親も政宗も一切いちゃもん付けないし。」

「ハハッ、まぁ確かにな。」

「でしょ。」

基本的に歌詞を書くのは私だ。前に元親に書かせてみたら、正直何を伝えたいのか分からなかった。本人には内緒だ。言ったら泣きそうな気がする。

そして、メロディーを付けるのは佐助。政宗も出来なくは無いが、まぁ言わなくても分かるだろう(察してくれ)

因みに、私の思うが侭に歌詞を書いているわけでは無い。3人が何かしら入れて欲しい言葉を言って貰い、其れに相応しい言葉を付け、完成させる。謂わば、骨に肉を付け美味しく頂く、と言う感じだ。

「しっかしまぁ…」

「ん?」

「おめぇ、良く俺たちが言った言葉だけでこんだけの歌詞が書けるよな。」

「まぁ……其れが出来なかったら歌詞書いてないしね。」

「明るい歌詞も作れるし、暗い歌詞も作れてよぉ、本当凄いと思うぜ。」

「誉めたって何にも出ないよ?」

「わーってるよ、んなことぐれぇ。」

「あっはは〜。」

その時その時の感情に任せて書いているが、此れが彼らにとっては調度良いらしい。明るい歌詞、暗い歌詞どっちにも偏らずどっちも書け、何時、どんな歌詞が来るか分からない。其れが良いらしい。

「でもね、私にも書くの苦手なジャンルあるんだよ?」

「へぇ〜、どんなんだ?」

「恋愛系」

「ほぉ〜、意外だな」

「佐助にも同じこと言われた。」

幾ら歌詞を書くのが得意な私でも“恋愛”の歌詞は比較的書くのが苦手なのだ。
自分の好きな人の前で自分の書いた歌詞を歌うのも恥ずかしいが、恋愛なら尚更だ。
そう、私は元親に密かに恋をしているのだ。
私と元親は幼馴染みの関係だったが、中学に入って元親に彼女が出来たと聞いた途端、心が痛くなる様な……恋と確実に思えるような反応を示したのだ。其れで私は自覚した。元親に恋をしている、と。

「なぁんかねぇ、書けなくは無いんだけど、シャーペンが進まないのよ。」

「でもよぉ、今書いてるの恋愛系だろ?書けてんじゃねぇか。」

「最後の此処が書けないの。ねぇ、何か良い言葉無い?」

歌詞はもう終盤。だが、一番最後に言おうと思っている言葉がどうしても思い付かないのだ。其処で元親に質問を投げ掛けた。さて、どんな答えが帰ってくるのか…

「じゃあよぉ、こんなのはどうだ?」

「ん?」

元親がそう言ってきたので元親の方を向いた。そして、其処には元親のドアップの顔が…





「あんたが好きだ。」






そして、口に伝わる柔らかい感触。そして、其れから直ぐに元親の顔が離れていった。

「……ぅ………あ……え」

「おめぇも、そんな顔するんだな。」

そして、元親がニヤッと笑った。

そして、私はそんなやり取りから暫くして、漸く事の重大さに気付いた。

「なあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!?」

私は唇を抑えながら元親と距離を取った。

「(えっ!?い、今元親に、き、ききき、キスされたあぁぁぁ!?ちょい待て!!えっ!!嘘!?まじで!?)」

男に、然も片想いの人にキスされたら此処まで戸惑うだろう。普通に言って。

「これはなぁ、2つ意味がある。」

「な、何?」

「歌詞の最後に入れて欲しい言葉、それと……」

「そ、それと?」

「そ、それとだなぁ……」

そう言ったきり、元親は何も言わなくなってしまった。
嫌、良く見れば顔が鬼灯の様に赤くなっている。

だが、暫くして意を決した様に元親が顔を上げた。

「俺はあんたが、いや、名前が好きだ。中学の頃からずっと。そういう意味だ。」

「っ!?」

嬉しい。と言って良いのか……此処で喜んで神様からの天罰が下らないだろうか……。

「で?」

「?」

「おめぇの、返事は?」

そんなの…

「良いに決まってるじゃない!!」

嬉しさを込めて元親に思いっきり抱き付いた。
両想いだったなんて、嬉しくて涙でる。

因みに、後から分かった事だが元親が付き合っていたと言うのは告白した子が流した嘘らしい。
勘違いしていた私が馬鹿でした。




(そう言えばさ、元親?)

(何だ?)

(私の事、中学の頃から好きだったんでしょ?政宗の話とかして、嫉妬心芽生えなかったの?)

(あん?何いってんだ、腸が煮えくり返るほど嫉妬してたぞ?)

(…………………)

(因みに、おれは独占欲つえぇからよ。覚悟しときな。)

((出来るだけ、他の男の名前出さないように気を付けよう……))

と私は、心の中で誓いました。