短編 | ナノ


馬鹿げている、この世界は、何もかも。

そう、静かに彼女は言った。感情の篭っていない、ただ目に映るものを見ているだけのような冷淡な瞳で。
目の前にいる俺ですら、存在価値の無いただの置物のように認識しているのだろう。ただ、たまたま幼馴染みという立場にいるだけの存在。仕方無く視界に入ってしまっただけの物体。
温もりなど、端から求めていない。彼女にそんな物を求めたところで、それは決して叶わない夢物語だ。

解った?

俺は何を解っていなかったというのか。こんな世界に価値が無いということなら、とうの昔に知っていた。

それとも、未だお前に温もりを求めている俺を、見透かしているのか。

外からは爆音が聞こえる。
ビリビリと、室内が音の波紋によって揺らされた。爆撃は近くで起こっている。

逃げないのか、と感情など無い漆黒の瞳を見つめながら問う。
彼女の黒水晶に映る俺は、酷く滑稽で思わず自嘲を溢した。

逃げたいなら、逃げれば良い。
嘲笑うように、俺を見つめながら、彼女は吐き出すように言う。黒水晶は、まるで汚物を見つめる瞳。弱虫め、暗にそう言われている気がした。

逃げたりなど、するものか。
口には出さなかった。その場で武器を構えれば、意志は充分に伝わる。
また、彼女も黙って武器を構えた。やがて、瞳を閉じた彼女。長い睫毛が伏せられ、元から人間味を感じさせない表情は、人形のようだ。
白く陶器のようだった肌には、戦闘による生々しい傷が刻まれている。

その傷を、そっと撫でた。
掌から伝わる生暖かい体温は、彼女の生の証。


歴史は繰り返す。
それは、何処までも果てしなく、永遠に。
この腐りきった世界が今までの過ちを改めるのは、いつになるのか。



歓喜に沸けや世界が終わる
(永遠の眠りについてしまえば良い)



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